統括責任者の「研修講師」奮闘記

今年度から社会福祉法人SHIPの重度部門、総合支援部『統括責任者』という大層な役職名を拝命した原田です。

僭越ながら自身が講師として実施した内部研修について、失敗談や感じたことをブログで報告してみたいと思います。

今回の報告は、コミュニケーション研修です。

内容は『役職・役割を踏まえたPDCAサイクル』と『業務を円滑にするコミュニケーション』についてです。

 

まず、役職に応じた職責(責任)と、役職に応じたコミュニケーションの重要性を確認しました。

それぞれが職責を意識し役割を全うすれば、業務は上手くいく。理屈ではそうです。けれどこれが難しい。時には…こじれてしまう。福祉現場のコミュニケーションとは悩ましいものです。

この他に、支援のPDCAサイクルを回しましょう。このサイクルを回すためには職員間のコミュニケーション=『伝達力』と『聞く力』が大切です。といった内容を話しました。

 

ところが2時間の研修時間なのに、30分でパワポの資料を読み終えてしまったのです・・・

なんてことでしょう。残りの1時間30分どうしよう。

 

これで終わりにするわけにはいきません。なんたって4分の3も、時間が残っているのです。

 

 

しかも私は統括責任者です。何とかして尺を持たせ、体面を保たなければなりません。

ロープレだ! こういう時はロープレです。

「インプットの後はアウトプットですね!」と、予定調和のようにロープレに突入。

 

どんなロールプレイか?

正社員がパートスタッフに対して、支援方法の変更や新たな取り組みを伝える場面を想定して『伝達力』と『聞く力』を磨くロープレを実践しました。

ありがたいことに、皆さん、一生懸命に参加してくれました。

 

ロープレを通じての気づき

ただ『一生懸命伝えるという行為』が、なんだか途中から正社員の『主張』に変わってしまう。

『伝達』という行為が、パートスタッフを『論破する』ような様相を呈してきます。

これはいったいどうしたことでしょう・・・

 

 

支援方法の伝達が目的なので「この支援の実施を、あたなにお願いします」と伝えること。

シンプルに『責任の所在』を、まず明確にすることがポイントになります。

しかし、相手に責任を担ってもらうということよりも、『自分が説明する』という『自分の責任』を果たすことが前面に出てきてしまっています。

 

また、その後に『いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように』(5W1H)に沿って業務内容を伝えるのですが、ここにも問題があります。

 

 

それは、事前の前提(使用する言葉や概念)が共有できていないということです。

たとえば、自閉症支援で「スケジュール」の使用については、『色々な形状がある』『対象の利用者様ごとに違う』といった前提条件の共有がないと、「あれっ? これスケジュール? 知ってるのは違うけど?」と、パートスタッフは疑問を抱きながら聞くことになってしまい集中できません。

 

 

結果、聞き手の『受けとる』状態が整わないまま説明が続いてしまいます。

これでは伝わりにくい。聞く側の準備ができていないのです。

 

今回のロープレを通じて『伝達』の準備段階として2つの点がポイントだと感じました。

ポイント①、責任の所在を明確にすること

ポイント②、前提条件を共有すること

 

聞く側のロープレ

ロープレを1ターンおこないましたが、まだ尺が余ります。

「次は聞く側のロープレですね!」と、これまた違和感なくロープレ第2段へ移行させることに成功。

 

こちらも発見がありました。

このロープレの設定は、「不親切な正社員の説明(情報が足りない、いいかげん等)を受けるパートスタッフが目的や情報を詳細を聞き出す」というものでした。

 

 

どんな発見かというと、最初に行った『伝達』をテーマにしたロープレ(相手に伝えるまで)と、『聞く力』をテーマにしたロープレ(相手が理解するまで聞く)の所要時間が、どちらもほぼ同じ時間だったということ。

むしろ、聞き手が詳細に聞き出して理解するやり方の時間が短く済んでいたということです。

 

つまり、業務を行うパートスタッフの側が把握するという点においては、時間をかけて詳細に伝えられるよりも、必要な情報を聞き出して確認できた方が、時間的な面で効率的という場合があるということです。

 

 

「伝える側が考える親切な説明より、情報不足でも聞く側が主体的に必要な情報を確認する」方が、業務の引き継ぎではむしろ有効であると感じました。(もちろん聞く側がちゃんと理解できているか確認する必要はありますが)

 

〆のグループワーク

実は…ロープレを2回投入しても30分余りました。

ここまでの4分の3は、なんとか研修の体を成して進めることができました。

しかし残り4分の1、どうするんだ原田、どうするんだよ。

 

ロープレの途中から気が気でない状況でしたが「そうだロープレで感じたことをグループでまとめてもらおう!」と、ひらめきました。

冴えわたる手腕、統括責任者は伊達じゃない!

 

 

内心ガッツポーズをキメながらグループワークへ移行!

 

グループワークの実践からは、みんなに共通の気づきがありました。

「とはいえ業務外の普段のコミュニケーションもすごく大切」というところです。

確かに、業務での必要最低限の『伝達』だけというのは、AIに指示を伝えられるだけのような、淡白で冷たいコミュニケーションな感じかもしれません。

 

今回のロープレを振りかえってみても、伝える側が「業務を依頼する」というAI的な状況です。

『依頼』という言葉、「依」も「頼」もどちらの漢字も “たよる” という意味合い。

相手に頼り、相手からも頼られる、互いに頼らないと福祉事業所のサービス提供を続けることは不可能です。

 

 

そういった意味で、スタッフ間の『頼り、頼られる関係性』の中で日々の支援業務が成り立っているのですね。

 

今回の研修で得た気づき

業務の伝達という行為の土台として、責任の所在の確認(誰の業務かを明確にする)、前提の共有(考え方や予備知識)があげられ、さらにその根底にはスタッフの役職を越えた互いに『頼り、頼られる関係』づくりが大切であると、改めて気が付きました。

 

 

次に『伝達』の場面でのロープレを思い出すと、正社員が途中から「主張のようになってしまう」傾向、伝達という行為は外への発信ですが、発信の対象が相手ではなく、自分自身のアウトプットになっているケースもあります。

 

そうではなくて、相手にインプットすることを意識する。

インプットされる側、相手のペースや理解に合わせた伝え方が重要になってくる。

 

 

また、たとえ伝達力が不足しているスタッフがいても、聞く側の「確認」する意識があれば、情報は伝わります。

むしろ、聞く側が主体的に業務内容を確認した方が、実際の対応場面で迷わず支援ができるのだとロープレを通じて感じました。

 

まだまだ不慣れな研修講師ですが、私もスタッフの皆さんを頼って、今後も少しでも現場の頼りになる研修をおこなっていきたいと思います。