てんかん患者で話す場『パープルカフェ』に活かしているSHIPでの経験
『障害福祉マンガ劇場』のこけしです。
先日、私、YouTubeデビューをさせていただきました!
なにかというと「てんかんを聴く『ぽつラジオ』」の11月号「誰にも言えなかった」でお話しさせていただきました。
https://twitter.com/kokeship_10cans/status/1460150820981198852?s=20
そこでは11歳で発症してからの症状の変化や治療、長年人に話せなかったことなど、いろんな話をさせてもらいましたが、現在行っている「パープルカフェ」と、そこに「SHIPでの障害者支援の経験を生かしている」という話もさせてもらいました。
YouTubeでは「会社」と言ってますが、SHIPができる前からの、ラファミド八王子での足かけ10年の経験です。
YouTubeで話したことにくわえて、具体的に紹介させてもらおうと思います。
パープルカフェの説明はコチラ↓
『てんかん患者同士で気楽に話そう!パープルカフェ☆オンラインってどんなところ?』
ちなみに、ぽつラジオを作成している和島さんですが、現在公開中の映画『梅切らぬバカ』の監督でもあります。老いた母親と、自閉症で大人になってから初めて家族と離れてグループホームで暮らす息子のお話です。
ラファミド八王子でも、大人になってはじめて家族と離れたという利用者様がいました。
最初は役所での手続きや、金銭管理、服薬、掃除など、一人でできなかったことを、少しずつできるようになっていった利用者様たちのこと、思い出されます…。
なんと、全国での公開が決定したそうです!!みなさんも、映画館へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
大人になってから、はじめて家族と離れてグループホームで暮らす人。
ラファミド八王子で支援していた利用者様の中にもいました。むがっちゃんの演技が楽しみです。 https://t.co/BvdOv6ExZe
— こけし (@kokeship_10cans) September 25, 2021
【パープルカフェのコンセプトは『気楽に』話せる場】
和島さん:パープルカフェを運営していく上で気をつけていることや大切にしているルールはありますか?
こけし:一番に自分が考えているのは気楽に話せる場にしたいということです。
現在は、オンラインで行っていることもあり、「名前や顔を出さない」「チャットだけで参加」「話を聞くだけ」「見学のみ」「途中参加、退席、休憩」などが自由で、いろんな人が参加しやすいようにしています。
毎回「自己紹介」をしてもらっていますが、それも「話したくないことや思いつかないことは無理に話さなくていい」とお伝えしています。あくまで目的は「話しやすくする」だからです。
自己紹介では「ニックネーム」「てんかんの説明」「参加理由や聞きたいこと」に加えて、毎回違うポジティブな答えになりそうな質問をしているのですが、これはSHIPの内部研修が参考になっています。
てんかん以外にどんな人かちょっと分かって、話しやすい楽しい雰囲気になれているんじゃないかな、と感じています。
また、「気楽」というのは「安心して参加できる」も一つだと思うので、個人情報や、個人間でのトラブルにも気をつけてルールを決めて、毎回開始時に確認しています。
【参加者の意見を聞いて作る「ルール」】
和島さん:こけしさんて新しいルールを導入されるときに皆さんに確認のメールを送られるじゃないですか。丁寧にプロセスを踏んで場を作っていくところが勉強になったんですけれども、今までの経験が反映されているのでしょうか?
こけし:そうですね。障害者支援の場で、絶対に正解は決まっていないです。あとは自分の考えだけでやろうとしても上手くいかないです。相手が自分で決めて動いていけるように支援するには、まず本人の話を聞くことが大事です。だからなるべくいろんな人の話を聞こう、自分一人では決めないようにしようというのはあります。
あとは、ルールはあっても、どうしてもルールからちょっと外れた部分で起こることや、人によって解釈が違うところなどが出てくるので、トラブルが起きるたびに確認して改善してというのを何度もやってきました。
パープルカフェで新しいルールや企画を導入するときは、今までに参加してくれたことのある方たちに、報告と意見を求めるメールを送っています。「返信は任意」でお願いしています。
ラファミド八王子でもルールではっきり決まっていないところでいろいろありました。
例えば、利用者様に頼まれて名札を作ってあげたスタッフがいました。それを見て他の利用者様が他のスタッフに頼むと断られてトラブルになったことがありました。
そのときは自分で作れるものをスタッフが作ってあげるのは「自分でできることを増やす」という自立支援の理念からそれてしまうとスタッフ間で共有し、利用者様には曖昧だった部分を謝って説明し、改めてルールとして共有しました。
細かい話だな~、そんぐらいいいじゃんどっちでも、と感じるかもしれませんね。
支援の場では個人の考えで、悪気なく、むしろ善意で行ったことが、本人の自立のためには逆効果になってしまうということが結構あります。
細かく確認して共有していく必要のあることは尽きないなと思います。
障害によっては、例えばうつ状態の方を励ましたり、発達障害で変化が苦手な方にスタッフによって違う声掛けをしたりすると、苦しめたり混乱させてしまうということがあります。
こちらの対応が、それこそ場合によっては利用者様の命にも関わることもあります。
ラファミド八王子ができたころは、スタッフはみんな福祉の経験がある人でも「障害者支援」は素人が多かったのですが、自分たちの気持ちだけで突っ走って、結果的に後から考えると失敗しまくっていました。
気持ちだけじゃだめなんだと実感し、相手を理解すること、話を聞くこと、みんなで共有することの大切さを学びました。
現在は、スタッフ全員が「理念」を共有し、内部研修や資格サポートなどでスキルアップをしてよりよい支援に取り組んでいると思いますが、それでも日々、問題は起きるし上手くいかないことがあるでしょう。
利用者様もスタッフも一人ひとり違う人間なので、当然のことなのです。みんなで確認して改善して、というのはずーっと続けていくことなんだと思います。
パープルカフェでは現在、以下のようなルールを決めて行っていますが、参加者さんたちの意見を聞いて作ってきたものです(細かいルールは固定ツイートの説明をお読みください)。
- 個人の情報を言いたくない人に聞かない
- 情報の提供はよいが活動への勧誘などは別の場所で
- 人の話をさえぎらないようにZoomの『手を挙げる』を利用
- いつ終わるか分からないという不安のないよう終了時間は守る
【どんどん試していく方針で、より話しやすい場へ】
こけし:それと、うまいやり方があったらどんどんやってみようという方針の会社でもあったので、いろいろ枠にとらわれないで試してみようというのもあります。
パープルカフェも最初は、SHIPの上田さんと竹浦さんと3人で話しているときに提案したら「いいじゃん、やってみようぜ」という感じで始まりました。
ラファミド八王子で働いていたころも、例えば認知行動療法をやってみたいと思ったらどんどんやらせてもらえました。ちなみに今はSHIPが集団認知行動療法の施設一覧に掲載されてるそうです。
SHIPの他の事業所でも新しいものを取り入れる話はよく聞きます。EXP立川のサービス管理責任者の奥主さんのインタビューでもSSTを多用した就労移行支援を提案したらすぐ始まったと聞きました。
そもそもラファミド八王子に就職しなかったらパープルカフェを作ることも、今たくさんの患者さんたちと知り合って話すこともなかったと思うと感慨深いですね~。
【障害の前に「個人」の声が聞こえる場を広げたい】
和島さん:いろんなことを考えて発見してきたと思うのですが、ラジオを通して伝えたいことはありますか?
こけし:自分の病気がきっかけで障害者支援の仕事に就いたのですが、そこで初めて「障害」や「病気」の前に「個人」なのだと気づきました。それまでは無意識に「障害者」を一括りに偏見で見ていたと思います。
「てんかん」もよく知らない人には一括りで見られているものだと思います。自分自身への見方も変わりました。ぽつラジオは「てんかん」の話というだけでなく、「てんかんを持った『個人』」の話が聞けると思います。
いろんな人の「知るきっかけ」になってもらえたらと思います。
「障害」の前に「個人」なのだと、ラファミド八王子で気づかされました。
パープルカフェでいろんな患者さんたちと話していると、共通点もあれば初めて聞く話もあり、当たり前なのだけれど、みんな一人ひとり違う人間なのだと気づかされます。
「てんかん患者」として見られているから苦しんでいることや、普段言えなくなっていることも、自由に気楽に話せる場として、パープルカフェを続けていきたい、さらに広げていきたいと思います。
同時に、「自分自身のてんかんを客観的に見る」ことも増えたと思います。人の話を聞くこと、自分の話を聞いてもらうことで、改めて考えさせられることや気づきが増えました。つらい気持ちを吐き出して楽になるだけでなく、「もっとてんかんを知りたい」と思うようになったなあと感じています。
現在、パープルカフェは毎月2回(第一日曜と第三土曜)にZoomでオンライン開催をしています。皆さんの意見や希望を聞きながら、例えば家族も参加する会に開催、イベントの開催など行っていきたいと思います。LINEのオープンチャットも現在、参加者さんの提案から進行中です。
ツイッター(@kokeship_10cans)とHPのお問い合わせから受け付けていますので、興味のある方はぜひ、気楽にご連絡いただけたらと思います!
障害福祉マンガ劇場「人生のてんかん記」作者・パープルカフェ主催・難治性てんかん当事者
元グループホーム(ラファミド八王子)職員・現在は自宅で仕事
国家資格:精神保健福祉士・社会福祉士