【SHIPインタビュアーの声】職員の言葉に感じる「変わらない挑戦する姿勢」と「築いてきた土台」
職員インタビュー担当のひとり、中山朝香です。
SHIPの前身であるSSSが初めて障害者向けのグループホーム(ラファミド八王子)を開設したときからのスタッフです。
現在は直接支援の場ではなく、「障害福祉マンガ劇場」や「パープルカフェ」による社会貢献活動をはじめ、この職員インタビューを担当するなどSHIPの広報活動も担当しています。
今回はSHIPの歴史を初期からを知る立場から、そしてインタビュアーとしての立場から、現在の現場のスタッフさんたちの話を聞いていて、思うことをまとめてみました。
職員一人ひとりに感じる「頼もしさ」
感じることはたくさんありますが、新人さんでもベテランさんでも、まず「頼もしい」と感じることです!
それぞれが支援に対する熱い想いをもっており、かつ「土台の部分」がチームとして共有されているというところに頼もしさを感じています。
インタビューを重ねて実感していることが二つあります。
一つめは「理念」が共有できていることと、そして二つめは「根拠に基づく支援」がやりがいにつながっていることです。
法人としては OJTや内部研修などにかなり力を入れているので、そういった取り組みが上手く機能しているのだと思います。
理念を基にしたチーム支援、法人の目指す目標、根拠に基づく支援の提供、それらを実現するための育成制度など、職員インタビューを通してSHIPが「土台を作り上げてきた歴史」を実感することができました。
そして今回の記事では、実はSHIPは「まだまだバリバリ建設中」であるという側面について書いていきたいと思います。
やりたいことに「チャレンジ」できる職場
2008年にラファミド八王子が開設したときから、今になっても変わらないことは「よさそうなことはどんどん試す」ところだと思います。
開設当初のスタッフは自分も含め、福祉の資格や就労経験はあっても「障害者支援」に関しては経験がほとんどなく、気持ちだけで突っ走る、という感じでした。
今思えば熱意だけで、足元は危うく、空回っていたことも多かったです。
現在はちゃんとした土台の上で「根拠」を持ってチャレンジできるようになったと感じるので、余計に「頼もしい」と思えるのでしょうね。
立ち上げ当初はラファミド八王子(定員17名)のグループホームを運営する小さな事業体でしたが、そこから7ユニット(定員51名)まで広がっています。
ラファミド八王子の他にもグループホームでいうと、サクレ江戸川(定員49名)、重度知的障害者対応のグループホーム友(定員25名)、友セカンド(定員20名)と、ものすごく事業拡大していることが分かります。
他の事業も次々に開設していきました。就労継続支援では「エスプリ」「エスプリドゥ」「ボンシュシュ」と3事業所もあります。就労移行支援では「EXP立川」、生活介護では「笑」「笑プラス」、放課後等デイサービスでは「子笑」、相談支援事業では「障害者相談支援センターいまここ」、他にも社会貢献活動もたくさんしています。
今後も社会問題の解決に向けて事業を拡大していくのだそうです。目の前に社会問題があるのなら、その解決に向けて進んでいくのが社会福祉法人SHIPが大切にしている部分です。
それも「日本一の社会的企業になる」という法人目標があるからこそかと思います。
自分がラファミド八王子で働いていたころ、「今のこの支援は、日本一と言えるんだろうか?」と考え、そして「いやまだ足りないな」と思い、次への成長へ向かえたと思います。
中途半端なところで満足することはないし、変えたければ変えられる、上手くいかなければやり直せる法人だと思います。
ただのやりたい放題ではまとまらないですからね。
理念の共有、内部研修、リーダーがまとめていくチーム支援、情報共有などがあるからこそ、成り立っているのだと感じます。
「新しいチャレンジ」の事例を紹介
これまでいろいろな「新しいチャレンジ」をしてきた職員さんがいました。
私がインタビューした人の中からいくつか紹介させてください。
たとえば「EXP立川」は、自己分析とコミュニケーションにとことんこだわった就労移行支援事業所ですが、サービス管理責任者の奥主さんの「やってみたい!」という気持ちと、上司の「じゃあ、やってみなよ!」という言葉から始まりました。
奥主さんは誰もが認めるコミュニケーションの達人なのですが、 SST(Social Skills Training)のバックボーンがあるからこその達人スキルなんです。
職場での対人関係が上手くいかずに休職や離職をくり返す人たちがとても多いという問題を解決するために、自己分析とコミュニケーションの支援に力を入れた就労移行支援の開設に踏み出したスタッフさんです。
生活介護「笑(えみ)」の生活支援員の紙谷さんのチャレンジは、重度知的障害・自閉症支援のモデルであるTEACCHに基づく支援の実践方法の「動画配信」の取り組みです。
SHIPでは年度末に「全体会」という催しがありまして、その中で事業所毎に「事例発表」をおこないます。そのときに秀逸だった紙谷さんの発表を、「法人の中だけに留めておくことは勿体ないよね」という声があがってスタートしています。
そして、「支援をあきらめ騎士(ナイト)」というキャラクターとして、YouTubeでは「構造化支援チャンネル」と銘打って、自閉症の学習スタイル(独特の理解の仕方の特徴)に合わせた「構造化支援」のコツを、初心者でも分かりやすい動画教材として発信しています。
放課後等デイサービス「子笑」の徳永さんは、障害福祉の専門性を高めるために精神保健福祉士の資格取得にチャレンジして見事に合格を勝ち取りました!
登山家でもある徳永さんは、山登りと同じように毎日コツコツとレポートや試験勉強をこなしてきました。仕事をしながら、そして家事をこなしながら国家資格の取得を目指すことはメチャクチャいばらの道です。
成功の秘訣は、勉強の日とお休の日を明確に分けたこと。勉強は仕事のある平日のみ、休日は旅行や温泉でリフレッシュしまくって、この長い道のりを登り切ったそうです。徳永さんの体験談は、これから国家資格を目指す人には必見です。
グループホーム友セカンド(重度知的障害者向け)のサービス管理責任者の妹尾さんは、この法人はまさに「建設中」で、必要ならば一度できあがったものでも「壊させてくれる」のが魅力と、語ってくださいました。
強度行動障害のある人たちは、自傷や他害の行為によって色々な訴えをされます。妹尾さんのチャレンジは、そのような人たちへの支援経験がまだ少ない中でも「トライ&エラー」の繰り返しで、現在の友セカンドの基礎を作り上げてきたことです。
妹尾さんの「まずは体感すること!」のチャレンジ精神は、この法人が初期に理念として掲げていた「まず助けます!」を思い起こさせてくれるものです。
かくいう私も、ラファミド八王子にいたころから現在に至るまで、試してみたいことを試させてもらっています!
この法人では、個々の「チャレンジ」が本当に歓迎されています。でも、もしかしたら知的好奇心やチャレンジ精神といったことへの主体性が低い人にはあまり向かない組織なのかもしれません・・・
私のチャレンジは、てんかんの病気から得た学びを世の中に発信していくマンガ「人生のてんかん記」の取り組みと、てんかん当事者が自由に話せる場所としての自助グループ「パープルカフェ」の取り組みです。
こういった取り組みにも、自分がもともと持っていたストレングスの部分や、SHIPで鍛えられてきた支援技法やファシリテーションのスキルが活かされていると感じます。
そういった自分の強みが新しいチャレンジにつながっていくのは嬉しい循環ですよね。
自分の「できること」で貢献していきたい
最後に、入社当初からを振り返って、今、わたしが思うことを書こうと思います。
わたしは大学を卒業後、最初に就いた仕事は販売中心のサービス業でした。実はそこで「てんかん発作」の症状が悪化してしまい、一年で解雇となってしまいました。
その経験を踏まえて、次の仕事に就くときは「自分の手の内でできる仕事がしたい」と思いました。
その会社での仕事を振り返ると、会社の規模は大きくはなかったものの、仕事の枠組みは出来上がっていて、「もっとこうした方が効率いいのに・・・」と思うことがありつつも、個人の意見では変えられないもどかしさを感じていました。
その後、いろいろと縁あってラファミド八王子のオープニングスタッフとなったわけですが、まさにゼロから作っていくことに携わりました。もどかしさなどどこへやら。前職と違って枠組みなどまったくありませんでした。
はじめの頃は、みんな経験も知識もなく、スタッフも個人の力が目立ち、当時のサービス管理責任者を見ても、自分が同じようにできるとはとても思えませんでした。
その後、若林さんや中村さんといった経験豊富なスタッフが続々とSHIPに来てくれたことで支援に対する方針が明確になり、だんだん自分に求められる役割が分かってきて、どうなりたいか、また実際にどうなれるのか、具体的に考えられるようになってきました。
いい意味で「自信」というか、それこそ「根拠」を持てるようになったのだと思います。
その後のわたしは、持病の「てんかん」による不調も重なったため、体調の安定を優先しようと決めたので、残念ながら支援の一線は退くことになりました。
でも、新しいことにどんどんチャレンジできるSHIPの風潮もあって、今では直接支援とは違うカタチでSHIPの活動に携わっているわけです。
実は心の中では、障害者支援の仕事に必要性もやりがいも感じていましたし、またいっしょに働いてきた人たちがサービス管理責任者などの重要なポジションに就いていく中で、自分が同じ場所にいられないことに、情けないような、悔しいような気持ちを感じていました。
仕事以外でも、自分の持病である「てんかん」のために制限されることなどはあります。でも今は、「パープルカフェ」という仲間と話し合える場があることで、ひとりで思い悩むことはなくなりました。
そして今の自分にできることをしていきたいと思っています!
その一つとして、今後もSHIPの職員インタビューをしていきたいと思っています。
現場のスタッフさんたちの話は、世の中の人たちに本当に知ってほしいことですし、ぜひお届けしたい!と、思うことがたくさんあります。
わたしはそれを発信していきたいですし、そしてまた新しいことにも挑戦していきたいと思っています!
障害福祉マンガ劇場「人生のてんかん記」作者・パープルカフェ主催・難治性てんかん当事者
元グループホーム(ラファミド八王子)職員・現在は自宅で仕事
国家資格:精神保健福祉士・社会福祉士