【職員インタビュー】「社会に貢献する、後悔のない支援を」EXP立川(就労移行支援) 奥山さん

就労移行支援事業所「EXP立川」 の奥山(おくやま)さん、

営業マンから一転、障害福祉の世界へ転職されました。

その過程と、これからについてお話いただきました。

 

商社やメーカーの営業マンとして働く

――奥山さんは、「EXP立川」に入る前はどのようなことをされてきたのでしょうか。

 

奥山

大学時代、デザインなどのクリエイティブな分野に憧れがあり、また「商社」という響きが格好いいと感じていました。

そんな自分が興味を持ったのが、印刷会社です。

印刷会社といっても、ただ紙にインクをつけるだけの工場(こうば)のようなイメージではなく、デザインもするし、商社的機能も持ち合わせた職場を想定していました。

 

その結果、紙を扱う専門商社営業職として入社しました。

紙といっても、コピー用紙のようなものではなく、書籍等で使われている厚紙を主に取り扱っていました。30名規模くらいの会社で、新人に丁寧な研修をされるというより、実地のOJTで、経験して仕事を覚えていくスタンスでした。

デザインをするというよりは商社的機能が中心の会社で、お客様からご要望のあった商品をいかにスムーズに提供できるかが大事でした。そのために日々あちこち駆け回っていたといっても過言ではありません。

その会社の売上で一番大きかったのが、手帳を作る企業への表紙材の提供でした。

表紙材の調達から、コーティング・文字の印刷までの生産管理をして出来上がったものをお客様である手帳作成会社へお届けしていました。その手帳を書店などの店頭で見るのが嬉しかったですね。

 

 

次に防災用品のメーカーへ転職しました。

商社はメーカーが開発した商品をいかにニーズのある企業へ届けるかにその存在意味があります。でも今度は、その上流過程で自社が開発したものを売る」という経験をしてみたかったのです。

また、社会の役に立つという観点で、防災用品を扱ってみるのも面白そうだと考えました。実際、必要とされる所に確実に役に立つ物を提供することはとても意義があると感じました。契約が成立するたびにとても嬉しかったのを覚えています。

ただ、防災用品は耐用年数が長いので、お客様に一度お届けすると、次に必要となるのは数年後になります。そのため、常に新規のお客様を見つけなければなりませんでした。

また、そもそも防災関連の購入に対してほとんどの方々は予算をとっていないのが現状なので、そこをどうにかお買い上げいただくところが、営業マンの腕の見せ所でもあり、難しいところでした。

そうこうしているうちに、もっと直接的に社会貢献が感じられる仕事がしたいと思うようになっていきました。

 

 

 

「モーニング食べますか?」

――SHIPに入社するきっかけを教えてください。

 

奥山

実は、難病を抱えている親類がいたことから、前々から障害福祉とは縁がありました。そのようなこともあり、社会貢献をテーマに、公益社団法人や慈善事業をおこなっている財団、就労移行支援事業所や就労継続支援B型事業所などを対象に転職活動をしました。

転職活動をしている私を見ていた母親が、「地元に障害福祉の求人がある」と、SHIPが運営するEXP立川の求人を見つけて知らせてくれました。「この機を逃すまい!」と考えて、すぐさま応募しました。

 

転職活動は、商社やメーカーとはまったく違う未経験の業界と職種で転職しようとしていたので、毎度、緊張気味に面接を受けていました。

ある企業の採用面接では、「あなたにとって社会性の高さとは何ですか?」などと、当時の私には難しい質問をされて、後々にも何も思い出せないくらいあがってしまい、満足に答えられなかった思い出もあります。

 

ということで、SHIP(EXP立川)の採用面接も、そのような覚悟と緊張感を持って臨みました。

でも、SHIPの事業所の面接場所がたまたまいっぱいだったらしく、その向かいにあるコメダ珈琲で面接をすることになりました・・・

 

採用面接といえば、一般的に、会社の一室で厳粛におこなうイメージがあった私は、その展開に少々面食らいながら席に着くと、面接官の高橋さんからごく自然に、「モーニング食べますか?」と聞かれたのです・・・

※コメダ珈琲には飲み物を頼むと、無料でトーストが付いてくる「モーニング」というシステムがあります。

 

さすがにパンを食べながら志望動機や自己PRを話すのは難しいだろうと考えて遠慮しましたが、フレキシビリティと親しみやすさを感じてホッと緊張が解けたのを覚えています。

 

その面接ですぐに「では、次は、現場のスタッフさんと話してみましょう」と言ってもらい、後日、EXP立川でも面接を受けることになり、その翌日にトントン拍子で「採用決定」の連絡をいただきました!

 

 

 

利用者様との面談は「真剣勝負!」

――今の仕事内容、また、大変なこと・やりがいなどを教えてください。

 

奥山

「就労移行支援」と言っても、その事業内容を想像できる人はそんなにいないと思いますので、私は、「障害がある人が仕事をするのをお手伝いしています」とお伝えするようにしています。

その中身は、就労に向けての体調管理、自分をコントロールするための知識のインプット、業務にあたってのスキルの習得、面接の練習、企業への同行など多岐に渡ります。

 

一番時間を割いているのは「面談」です。

EXP立川では、利用者様ご自身による「気づき」をとても大事にしています。支援者の指示で動いて就職できたとしても意味がないんです。

 

自らが課題や改善の必要性に気づき、そして自らが行動した結果としての就労につながるよう、自主性を重んじています。

そのためには、まず自らを知る必要があり、自分を客観視できるよう、立ち返る機会を多くもうけています。

 

いくら良い内容の支援プログラムを提供できたとしても、そしてそれが利用者様にしっかりインプットされたとしても、それを実際の職場で生かせるようになるアウトプットが伴っていなければ就職活動は通りません。

その気づきを得てもらうために「面談」は大切なものだと考えています。

 

 

この仕事の大変なところというと、面談はいつも真剣勝負なところですね。

こちらがいかに準備をしても、利用者様次第で話しの展開が変わってくるので、支援者には臨機応変に対応する力が求められます。

とはいえ、準備しなくてもいいわけではありません。

むしろ、しっかり準備したうえで、さらにプラスして臨機応変に対応することが求められるという感じでしょうか。

 

一般に面談の準備は、利用者様の情報や日々の記録、プログラム中での発言や態度、体調の推移などを理解しておくことが求められます。

もちろん、支援記録などを一字一句覚えているわけではありませんが、おおよそのことは頭に入れて面談に臨むようにしています。

 

また、SHIPではMI(Motivational Interviewing:動機づけ面接法)という技法を使って面談を進めています。

利用者様の「頑張りたい」と思う気持ちを整理して、それをどのように行動につなげていくかを検討していく『ツアーコンダクター』のようなことをしていきます。

新たな行動の原動力である「頑張りたい」の気持ちがどこにあるのか、常に探りながら面談をおこなうため、とても頭を使います

 

 

また、当たり前の話ですが、就労移行支援のサービスは、利用者様に来ていただかないことには始まりません

そのためのEXP立川の魅力を知ってもらう・興味をもってもらう・利用してもらう、という広報的な活動にも難しさを感じています。

たとえば、一般のサービス業であれば、いわゆるエンドユーザーへ直接「このサービス受けてみませんか?」とアプローチすることが可能です。

そして、その過程の中で「なぜこのアプローチは失敗したのか」という情報も掴みやすく、次に生かすこともできます。

 

しかし、就労移行支援のサービスは、ハローワークやクリニックなどの紹介で、間接的にEXP立川を知って、うっすら興味をもって、ようやく利用を検討しはじめるという方がほとんどです。

したがって、ご利用(契約)にまで至らなかったときには、何がいけなかったのか?」という情報が掴みづらいことは大変なところです。

 

一方、利用者様が色々なハードルを乗り越えて就職するに至ったときは、大きなやりがいを感じます

もちろん就職することがすべてではありませんが、利用者様が本気で「就職したい」と思い、EXP立川に通所することで、その思いを実現していく姿を見るのはとても嬉しいですね!

もちろん、就職後も一定期間のサポートをする「就労定着支援」というサービスもありますので、就職はあくまで通過点に過ぎず、むしろ利用者様にとっては就職してからが本番です。

そういう意味で、就職はうれしいときでもあり、帯を締め直さなければいけないときでもあると思っています。

 

 

 

「後悔のない支援」をしていきたい

――EXP立川には、どのような利用者様が多いのですか。

 

奥山

精神障害をお持ちの方で、

双極性障害不安障害統合失調症の方が多いですね。

現在は男性が多いです。

そのほか、発達障害(ASD・ADHD)の方もご利用されています。

 

「職業準備性ピラミッド」(就労に必要な要素を大事な順に下から積み上げていく)の観点からみると、一番上で「職業適性」(作業を正確にこなしたり、指示を理解したりする能力)はあっても、一番下の「健康管理・体調管理」や、下から二段目の「生活のリズム・日常生活」で苦労しているという、「就職に近そうで遠い人」が結構いらっしゃいます。

 

(出典:高齢・障害・求職者雇用支援機構ホームページ

 

 

――力を入れているサービスを教えてください。

 

奥山

障害者雇用をしている企業さんは『毎日ちゃんと出勤できる人材』を第一に求めていらっしゃいます。

そのためには、生活を安定させることが大前提になりますので、そこには力を入れて支援していきたいと考えています。

 

EXP立川では、さらにそこに上乗せして、対人関係や集団生活を円滑にするための技能を訓練するSST(Social Skills Training:社会生活技能訓練)や、認知と行動に働きかけて思考のバランスを整えながらストレスを減らしていくCBT(Cognitive Behavior Therapy:認知行動療法)などの心理プログラムをたくさん用意しています。

 

ただ、それだけだと知識ばかりの頭でっかちになって、実践が伴わなくなるので、個人的には企業実習が大事になる」とお伝えしています。

実際の仕事の場に身を置くことで自分の課題にようやく気づくことが多く、実習を終えてからなお一層、EXP立川でのプログラムに身が入るという利用者様が多いです。

 

 

 

――ところで、職場の雰囲気や魅力などはいかがでしょうか。

 

奥山

一言でいうと「風通しの良い職場」です。

上下関係をあまり感じさせない、コミュニケーションが取りやすい雰囲気があります。

「その意見は違う」などと頭ごなしに否定されることはないので、どんなことであってもためらわずに意見を言うことができる環境です。

 

 

――今後の目標、そして、一緒に働きたい人を教えてください。

 

奥山

さしあたっての今後の目標として、現時点で明確になっているのはサービス管理責任者になることです。

そのための研修がSHIPは手厚いといえます。

 

大きな目標でいうと、「後悔のない支援をしたい」と思っています。

自分が管理職になっても、スタッフさん全員が後悔やわだかまりのようなものを残すことなく、常に前向きに支援していけるような環境・仕組みづくりをしていきたいです。

 

一緒に働きたい人は、プロセス自体に楽しみを見出して全力投球できる人です。

対人支援職には正解がありません。

面接の練習をしても、他のスタッフさんがするのと自分がするのとでは、同じ感想を持たないことの方が多いです。

そういった正解がないところを面白がれる人がいいですね。

 

 

 


 

ありがとうございました!

営業マンから一転して支援職へ転職し、着実に研鑽を積んでいる奥山さん、

これからも頑張ってください!