【職員インタビュー】自分たちだけで背負わない「連携の支援」ラファミド八王子・谷垣さん
グループホームラファミド八王子 世話人の谷垣さんにお話しを伺いました。
元々はテレビ業界で働いており、福祉に転職し、SHIPには2020年3月に入社されました。
介護福祉士の資格をお持ちです。
以前に動機づけ面接法のインタビューでもお話を伺っています。
テレビ業界から福祉の世界へ
――これまでの経歴を教えてください。
谷垣
最初はテレビ業界で構成作家として働いていました。大阪で専門学校に通い、仕事に就いた後、上京しました。
自分の希望する仕事には就けたのですが、構成作家の仕事は歩合制で収入は月ごとに不安定、当時は今と比べて働き方改革などまったくなく、仕事も生活も不規則でした。また、意外とテレビの仕事は楽しくないな、とも感じていました。
そんな中、「元気な高齢者」を特集する番組に関わり、高齢者にインタビューする中で、元気に見えても裏では妻に先立たれた寂しい思いや、困っている高齢者がたくさんいることを知り、超高齢化社会に向かっていることを実感しました。
そこで福祉の世界に興味を持ったこと。年齢も30代手前になり安定した給与で生活したいと思ったこと。それと、テレビ業界に魅力を感じなくなったことの三つが重なって、福祉業界への転職を決めました。
福祉業界では、高齢福祉のデイケア、障害福祉の生活介護・就労継続支援B型などで働きました。
――SHIPに入社したキッカケを教えてください。
谷垣
前職もSHIPと同じ社会福祉法人でした。就労継続支援B型もSHIPのエスプリと同じパン屋でした。
事業は軌道に乗ってはいましたが、障害者支援のノウハウを知っている人間がだれもおらず、パン作りもみんな初めてという手探り状態でした。
そんな中、朝早く満員電車で通勤し、終電ギリギリまで働くといった生活が1年以上も続いたこと。また、当時は子どもが2~3歳と小さかったのに自分は仕事が手いっぱいで、妻も育児に追われてライフワークバランスが保てず、メンタルが不安定になってしまいました。
職場に相談したのですが生活を改善することができず、転職を考え、介護ジョブ(転職サイト)に登録しました。
そこで親身になって調べてくれた担当者に「社会福祉法人SHIPは良い会社です」と、現在のラファミド八王子の求人情報を紹介され、グループホームは経験はなかったのですが、興味はあったので面接を受けることにしました。
そして、面接と見学をしたその日に入社を決めました!
――即決だったんですね。何が決め手だったのでしょうか。
谷垣
お会いした職員の人たちがみんな、とにかく好印象でした。
最初、本部で高橋さんに面接してもらったのですが、第一印象は「めっちゃイケメンやな」でした (笑)
あまり今までの福祉の仕事の中であったことのないタイプの方だと思いました。面接の中で「いろいろ大変でしたね」と気持ちを受容してもらえ、心が楽になりました。
その後、現場のスタッフの渥美さん、矢部さんと面接し、現場でその日に働いていた出浦さん、他にも色んなスタッフの人たちに会わせてもらいました。
みなさん本当に話しやすく、こちらの質問にもすごくフランクに分かりやすく答えてくれたので、「ここで働いてみたいな」と思いました。
前職は通勤が大変でした。実はラファミドは通勤時間が同じくらいでした。でも、電車もバスも座れますし、車での通勤もOKなので、前職よりずっと負担が少ないこと、また残業がほぼ無いということも入社を決めた理由のひとつです。
アパートタイプGHの専属になって気づいた「思い込み」
--現在の仕事内容を教えてください。
谷垣
ラファミド八王子のアパートタイプの専属世話人として、利用者様の生活全般の支援をしています。
以前まではドミトリータイプとアパートタイプのユニットをみんなで協力して支援していく方針でしたが、現在ではドミトリータイプの専属スタッフ、アパートタイプの専属スタッフ、というカタチに分かれて支援をしています。
利用者様は、精神障害をお持ちの方が約8割、知的障害をお持ちの方が約2割くらいです。
アパートタイプの建物なので一人暮らしに近い生活をされていて、ほとんどの方が就労継続支援のA型・B型、病院のデイケア、一般企業でのアルバイトなど日中は活動しており、今年度中に一人暮らしをすることを目標にしている方もいらっしゃいます。
--仕事のやりがい、大変なところを教えてください。
谷垣
ひとつのキッカケや動機づけ、少しアプローチを変えることで、利用者様が昨日までできなかったことができるようになり、「こんな関わり方が良いんだな!」と発見があります。ひとつ上手くいくと、後からもスムーズに進んでいくことに、やりがいと面白みを感じます。
特に印象に残っているエピソードが二つあります。
日中の活動場所になかなか通えない方がいました。
事前にその利用者様の情報を見ていると「問題なく通える人だろう」と思っていたのに、実際には通うことを拒否し続けていらっしゃいました。
お話しを聴いてみると、新しい環境に行くことが苦手ということが分かりました。
そこで、最初だけ同行支援をしたのですが、その後は安定して通えるようになりました。
「こんなに単純なことで良かったのか」と思ったのと同時に、「もっと早く聴いてアプローチしておけば良かった」とも思いました。
もう一つは、居室の掃除がなかなかできなかった方です。
発達障害の特性に配慮した支援として、はっきり具体的に伝えたことで上手くいったエピソードです。
それまで曖昧だった声かけを「何月、何日、何時にお部屋に伺います!」と具体的にすることで、スムーズに居室清掃を開始できるようになりました。
この利用者様に対しても「ゴミ捨てくらいできるだろう」と思っていたのですが、話を具体的に聴いてみると「やり方が分からない」とのことでした。
ごみ袋を用意することや、ごみの分別の仕方などを具体的にお伝えし、こちらで一度モデルを示すと、お一人で継続して掃除ができるようになりました。
自分の思い込みに反省しつつ、支援者のアプローチの次第でスムーズに物事が進むことを実感し、もっともっと試してみたいと思うようになりました。
以前は、ドミトリータイプの利用者様は『障害が重い人たち』、アパートタイプの利用者様は『自立している人たち』と勝手に思い込んでいました。
専属で関わるようになって自分が思っていたより支援が必要なのだと気づき、今では世話人同士で相談しながらアプローチ方法を変えているところです。
大変だなぁと感じるのは、健康面・金銭面の支援です。
病気の自覚を持てずに通院や服薬を拒否してしまう方もいらっしゃいます。すると病状が悪化してしまうため、生活全般の機能維持に大きく影響してしまいます。
また、認知機能の影響によりお金を計画的に使うことが難しい方もいらっしゃいます。収入のあった1週間後には手持ちがなくなってしまった・・・といったようなケースにも遭遇します。
生活の再建のため、課題を共有しようと働きかけるのですが、なかなか自覚してもらえずスムーズにいかないこともあります。
健康面や金銭面の課題は、ライフラインに直結する問題になるので、グループホームの支援者として3年半働いてきて、今なお難しいと感じている部分です。
――特に力を入れている支援はありますか。
谷垣
アパートタイプの専属になってからは特に、「ご自身で気づいてもらえる」ような支援、「関係者機関と連携」しての支援、この2つです。
例えば、精神障害をお持ちの方だと、普通に生活していたのに急に病気になったことで自分を障害者と受け入れにくいという特徴があります。そのため、こちらが心配な点を伝えても真に受けてくれないという側面もあります。
そのため、病院や通所先、訪問看護、計画相談、役所、家族など、関係者の皆さんとの連携を図り、ご本人の状態についていっしょになって客観的に伝えていくことが大切です。
また、アイメッセージ(私を主語にした言葉かけ)で、自分の意見を誠実に伝えていくこともバランスよくおこなうように心がけています。
ご自身で気づいて、ご自身の意思で安心・安全な生活を送ってもらう支援に力を入れています。
そのためにも、通院や日中活動など、必要な社会資源とつながり、主体的に社会に参加してもらうための支援に重点を置いています。
前職がそうだったのですが、障害者の人を集めたひとつの村のような施設もあります。
そういった所でよく起こる福祉あるあるの話ですが、その施設で「全部を解決しなければ」と考えてしまいがちです。
SHIPの理念にもありますが、「社会資源を上手く使って自立を補っていく」という支援の視点は大切です。
「ラファミドだけで背負わなくてもいいんや」という視点を持って、関係者との連携で外部からもアプローチしてもらって、ラファミドとして担っていく役割を明確にしていっています。
それが、背負いすぎないことにもつながりますし、ポイントを絞った効果的な支援にもつながります。そして、支援者として長く働くための健康維持にもつながっていると思います。
一日一日に集中することで、道を広げたい
――今後の目標を教えてください。
谷垣
SHIPの中のいろんな人と関わりたいです。
SHIPはいろんな事業所があるので、ラファミド以外の事業所も経験して、いろんな職員の人たちのやり方を吸収して、知識と人脈を広げたいと思っています。
そのためには、今は長期目標を持つより、「今日一日をやる」ということに重きを置いています。
一日一日に集中することで道が開けていくのではないかと思っています。「あいつ毎日一所懸命やってんな!」と評価してもらい、いろんな事業所で求められる人材になりたいと思っています。
実は、前職での挫折体験から就労継続支援B型は「もういいや・・・」と思っていたのですが、一方で「再挑戦したい」気持ちもどこかにあります。
SHIPは前職と同じでB型は『パン屋さん』なので、前の職場とはどう違うのか、やり方を見てみたいという気持ちがここ半年くらいで湧いてきました。
他にも、いまここ(相談支援事業)の篠田さんと話して計画相談も面白そうやな、EXP立川(就労移行支援事業)の奥主さんと話して一般企業向けの就労支援はまだやったことないな、重度障害者の笑(えみ)・笑プラス(生活介護事業)での構造化支援に特化したしゃべらない支援も面白そうだと思います。
これというのはないですが、いろんな事業所に興味があります。
あまり人見知りがないので新しい職員さんと話すことは楽しく、Zoomでの内部研修も面白いです。また、たくさんの職員さんからいろんな良いエピソードを聞けるので、話を聞いてみたい人、会ってみたい人がたくさんいます。
SHIPに入社したときはコロナによるマスク生活が始まり、職員や利用者様の顔を見てのコミュニケーションができませんでした。最近やっとマスクを取る機会が増えたので、改めていろんな人たちと顔を合わせていくことが楽しみです。
また、前職では経験できなかった市役所や病院などとの連携業務がSHIPに来てから経験できており、社外の人たちとの関りにも楽しみと刺激をもらっています。
支援に関する連携だけでなく、関係機関に魅力をプッシュして、SHIPを大きくする手助けを自分にもできたらと思っています。
見学にもぜひ来てもらいたいですし、知ってもらいたいですね。
変わらず感じるのは「挑戦する姿勢」と「心地よい距離感」
――職場の雰囲気や魅力を教えてください。
谷垣
「ええやつが多いな」と思います。
退職した人、異動した人、新しく入った人、全員ふくめて「話しやすい職員さんが多いな」と、入社したときから継続して感じています。
コミュニケーションの取りやすさも、今まで自分が働いてきた福祉畑とちがうと感じます。
思い返すと、今まで勤めていた職場では、問題を起こして来なくなったり、家族からのクレームが多かったり、挨拶がちゃんとできない職員がいました。でも、SHIPに来てからはそういったストレスは感じていないです。
また、感情的になる職員さんは本当にいなくて、建設的な話し合いができる人が多い印象です。
プライベートな悩みも気軽に聞いてもらえますので、本当に助かっていますし、大好きですね。
年齢が上の利用者様も多い中で、若い20代、30代の職員も頑張ってくれていると思いますし、自分のような中途採用も広く受け入れてくれる職場なので、ありがたいです。
SHIP全体については、これも入ったときからの印象がずっと強いのですが、ベンチャー企業のような挑戦する姿勢を感じます。
自分の知っている福祉施設とは違うイメージを持って入社しましたが、今も変わらず挑戦の姿勢を継続していると思います。
研修も、今までの職場ではこんなに受けたことはなかったです。
そういうことを、上田さんはじめトップの人が率先してやっているので、現場の職員はすごく士気が上がると思います。
また、理事長もふくめて、上の人とも話しやすいと感じ、それも今までの職場とちがうと感じます。
今までの職場では偉くなった方は関りが薄くなっていき、理事長も名前を知っているくらいでした。SHIPでは上の人も名前を憶えていてくれるし、コロナで大変な時に理事長がメッセージをくれたときも嬉しかったです。
本部とは業務内容もちがいますが、遠からず近からずいい塩梅の距離感で相談もしやすいです。
人間関係で窮屈だと感じたことがなく、心地よい距離感を保った職場だと思います。
――どんな人と働きたい、どんな人がSHIPに向いていると思いますか。
谷垣
まず素直な人、あとは個人的にはフットワークが軽い人と一緒に働けたらと思います。
優先順位をつけて率先して動ける人というニュアンスでしょうか。
利用者様が不安定など、何かあったときにある程度は自己判断で適切な対応が取れて、それをちゃんと共有もできる方と働けたら助かるなと思います。
現在、アパートタイプの担当世話人は2名の少数精鋭です。1人で勤務することも多いので、判断力とフットワークは必要な職場です。
サービス管理責任者との報連相も大切な業務なので、それも兼ねて自分で動ける人が良いですね。
――最後に、福祉で長く働くために必要なことは何だと思いますか。
谷垣
SHIPに入って思うことですが、「失敗を恐れないというより、失敗してもいいやと思えること」と、「オンオフの切り替えが上手くできること」の2点だと思います。
支援は、計画通りにいかないこと、思った通りにはいかないことの方が多いです。
失敗してへこむとメンタルをやられてしまうので、失敗したときに、落ち込まず、楽しみながら次のアプローチに挑戦できる姿勢が必要だと思います。
SHIPに入ってからは休みが取りやすく、家族との時間がめちゃくちゃ増え、仕事と休みのバランスを上手く取れるようになりました。
前の会社では、有給休暇が取りづらく、夏休み・冬休みもなく、平日は子どもにほとんど会えませんでした。
もうちょっと早くSHIPに転職していたら、子どもがもっと小さい内から関われたのになぁ、という後悔がありますね。
ライフワークバランスで悩まれている方にはぜひSHIPに転職してもらいたいですね。
谷垣さん、ありがとうございました。
今までのインタビュー中で一番いろんなスタッフの名前が出てきたなぁと思います。
谷垣さんの『人と関わる能力』を活かして、たくさん吸収していってほしいです!
谷垣さんの過去の記事「動機づけ面接法・研修インタビュー」
障害福祉マンガ劇場「人生のてんかん記」作者・パープルカフェ主催・難治性てんかん当事者
元グループホーム(ラファミド八王子)職員・現在は自宅で仕事
国家資格:精神保健福祉士・社会福祉士