【職員インタビュー】デザイン業界の経験を活かしながらステップアップ!『エスプリ』森下さん
就労継続支援B型「エスプリ」の森下さんにお話を伺いました。
デザイン業界で長く働かれていて、福祉は未経験で転職し、2023年7月に入社。A・F・T 2級色彩コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格をお持ちです。
転職の理由や、未経験から転職して実際どうだったか、福祉とはまったくちがう前職での経験は活かせているのかなどについて聞いてみました。
50歳の節目に、デザインから福祉へのキャリアシフト
――転職までの経緯や理由を教えてください。
森下
現在50歳で、約30年間デザイン業界で働いてきました。
印刷会社や制作会社に勤め、グラフィックデザイン、宣伝広告、販売促進などを手掛けてきました。クライアントとの打ち合わせで課題や要望を聞き、解決していくために必要な情報を整理し、最終的には視覚的なコミュニケーションに落とし込んで、世の中に発信していくという仕事をおこなっていました。
担当しているクライアントや関わっている仕事によっては、業務時間がかなり長くなることもあり、ミドルエイジに差しかかるにつれて体力的にキツいと感じるようになりました。
またデザイン業界は若い人材と新しい発想が次々と入ってくるので、ここら辺でまったく違う職種に挑戦してみるのもひとつかなと思い、デザインの経験を生かして世の中に貢献できる仕事はないかと就職サイトなどで探している中で、SHIPの求人広告を見つけました。
福祉に関わるのはまったくの初めてですが、これからの高齢化社会等を考え、長く続けていける仕事として、福祉も選択肢のひとつとしてありだと思い、応募してみることにしました。
ホームページの就活者への採用情報や動画、ブログを見て面白そうだと思ったのも応募のキッカケです。
就職説明会に参加し、採用面接を受けてみて、面接してくださった高橋さんの印象がとても良かったので、やってみようかなと思いました。
その後、エスプリの責任者 前川さんに面接していただき、そのときの印象もとても良く、またエスプリはパン屋の販売促進の仕事もあると説明され、面白そうだな、これまでの仕事の経験も活かせそうだなと思い、入社を決めました。
――現在の仕事内容を教えてください。
森下
エスプリは「地域のパン屋さん」と「就労継続支援B型」という二つの側面があるので、仕事内容も大きく分けて二つあります。
パン屋の従業員としては、パンやお菓子の製造・販売、商品開発、販売促進、イベントの企画などをおこなっています。
B型の支援員としては、利用者様の個々の希望を聞きながら目標を設定し、日々の業務の中で利用者様のできることを増やすためのサポートをしています。
――仕事のやりがい、大変なところを教えてください。
森下
入社から一年未満ですが、利用者様から少しずつ受け入れられている、頼りにされていると感じることが増えてきました。
すごく小さなことかもしれませんが、「森下さん」と名前で呼んでもらえることが増えました。最初はまったく名前で呼んでもらえないことが多かったのですが、呼んでくれる人が増えて、それはすごく嬉しくてやりがいに感じています。
コミュニケーションは大切にしようと思い、話をよく伺うようにしました。小さなことでも、まず「話を聴く」ということを大切にしようと思ってやってきました。
担当している利用者様から、「森下さんは次いつ来るの?」「いないとつまらないよ」「森下さんともっと話したいんだよ」と言われることも増えてきて、素直に嬉しいと感じ、やりがいにつながっています。
大変なところは、いつもとちがう場面での対応です。昨日はかなり調子よくパンを作っていたのに、次の日来ると全然パン作りができない、といった利用者様もまれにいるので、どうしたのかな・・・と思うことがあります。
そういう場合は、無理に働くことはしてもらわずに、面談をしたり、できるだけ辛さに寄り添った対応を心がけています。思いがけなく突然起こるので、そこが大変と言えば大変なところと感じています。
――障害者支援に初めて関わって、どんなことを感じましたか?
森下
それまで「障害者」の方々に関わることがなく、意識していなかったので、最初はよく分からなかったというのが正直なところです。
エスプリで利用者様が、それぞれ目標を持って取り組んでいる姿を見て、一人ひとりみんなが頑張っているのだなと思いました。
また、以前は、例えば電車でずっと一人で話している人を見かけて「なんだろうな」と思うことはよくありましたが、あまり気にしてはいませんでした。
実際に障害者の皆さんと触れ合って、どういう背景や病気があるかなど知ってみると、その行動がその人にとってはすごく落ち着くことなのだろうと理解できました。今は、同じような光景を見ると、以前と違い「何か理由があっての行動なんだろうな」と感じるようになりました。
「パン屋の売上UP」と「質の高い支援」の両立が課題
――今後の目標、課題を教えてください。
森下
今後は、福祉系の資格を取り、いろいろな専門的知識を持った上で支援をしていきたいと考えています。
まずは介護福祉士の取得が目標で、初任者研修を受けて、段階を踏んで目指していこうと思っています。
先々は、精神保健福祉士など他の資格も目指していければと思いますが、少しずつステップを踏んでいきたいです。
まだ1年目で、パン屋の運営や利用者様の支援も覚えることが多いので、上司や先輩職員に聞きながら学んでいきたいです。
最終的には、周りの職員や利用者様から頼りにされる存在になっていければなと思います。
課題だと思っているのは、パン屋の売り上げUPと質の高い支援の両立です。
エスプリは、利用者様の工賃を上げることに取り組んでいて、その分パン屋の業務の比重がすごく多いのが現状です。売り上げを高めながら、支援の質も落としてはいけないと思うので、その両立が今の大きな課題だと感じています。業務の効率化などをしながら、改善していきたいと考えています。
まだ探り探りですが、エスプリは自分に合っていると感じますし、販売促進やデザインなどをやってきた経験を活かして、エスプリの販売促進も自分の得意分野として力を入れていきたいと思っています。
先々、福祉を学ぶ中で、主任やサービス管理責任者も目指していければとも思いますが、今はまず勉強をさせていただいて、キャリアップもステップを踏んでいければなと思います。
――エスプリはどんな利用者様が多いですか?
森下
大体、8割くらいが精神障害の方、残りの2割が知的障害の方です。ラファミド八王子(男性のみのグループホーム)の利用者様が多いのもあり、男女比は8~9割は男性でしたが、今年に入ってから女性の利用者様が少しずつ増えてきています。今後、女性の方も、さらに増えていけばいいなと思います。
長く利用していただいている方も多いので年齢層はやや高めですが、新たに若い方にもどんどん利用していただいて、安定して、長く継続していける事業所にしたいと思います。
デザイン経験を活かした「モチベーションを上げる支援」
――エスプリで特に力を入れているサービスはありますか?
森下
前職の経験を活かしてエスプリのパンフレットを作っているのですが、その中でエスプリの魅力を5つあげています。
① 高い工賃を目指してみんなで一緒に頑張っています!
② 利用者様が中心となって明るく、楽しく、仕事をしています!
③ 利用者様それぞれに合った働き方や作業が見つかります!
④ 利用者様の強みを活かす支援を心がけています!
⑤ パン作りを通じてお客様を笑顔にします!
この5点には以前からも取り組んでいますが、新規の利用者様にも興味を持っていただくための売りとしても、改めて発信していこうと力を入れているところです。
個人的には、デザインをやってきたので、パンフレットやポスターなどを作成して、視覚的な面から利用者様のモチベーションを上げられる支援ができたらと思っています。
例えば、エスプリでは、利用者様と職員が一緒に企画したパンの販売に力を入れているので、そのポスターを毎月つくっています。
アイディアを出した利用者様の合意を取った後、その方の写真付きで「私が作りました!」とお載せしています。そして、そのポスターが出ることでとても喜んでくださる利用者様もいらっしゃいます。
利用者様が嬉しいと感じて積極的な通所につながるなら、ポスターづくりのような支援も大きな意味があると思います。
実際、オリジナルのパンを作ってポスターに載ることで、モチベーションが上がって、どんどん作りたいと好循環になるケースを何度か見ているので、広告づくりは自分ができることのひとつだと思い、力を入れて取り組んでいます。
――パン屋以外の畑、アクセサリー作成についてはどうですか?
森下
わたし自身は現在、畑作業に直接的には関わっていませんが、パン作りだけでなく、畑作業があることで「楽しい」と感じている利用者様もいらっしゃいます。パン作業以外にも作業メニューがあることは、エスプリの魅力のひとつだと思います。
畑で作った野菜はそのまま販売する以外に、パンの材料にも利用していますが、今後はパン作りにもっと使っていければ、さらに全体の効率・効果が上げられていくのかなと思います。
アクセサリー作業の担当利用者様はお一人だけですが、秋川店での販売は好評です。そちらもポスターを作ってアシストしているので、さらにモチベーションを高められる支援ができればと思います。
未経験でも安心な「チームワーク」と「先を見越せる土壌」
――職場の雰囲気、魅力を教えてください。
森下
チームワークがいいことが魅力です。新しいことにもみんなでチャレンジし、困ったこともみんなで解決していく風土があります。
入社して特に感じたのは「優しい人がすごく多い」ということです。入社当初はとても緊張していましたが、声をかけてくれる方が多く、スムーズに仕事や職場の雰囲気に慣れることができました。新しい職員が入ってきたら、今度は自分が同じようにしたいと思っています。
職員だけでなく利用者様に対しても、相手のことをとても気遣う姿勢があり、それがエスプリ、SHIP全体のいいところだと感じています。
――働きやすさの面ではどうですか?
森下
パン屋なので、パン作りなどの日中の業務は非常に忙しく、それにプラスして利用者様の支援も行うので、業務量はギュっと詰まって、正直多いなと感じます。
でも、デザインの仕事をしていたときとちがい、帰るときは帰る、休むときはしっかり休むということができていて、業務とのメリハリがつけられることは働きやすさにつながっていると思います。
また、先ほど話したようにチームワークが取れているので、自分が出社していないときも、他の職員が問題なく現場を回してくれていると感じられ、安心して休むことができています。誰かが急に休んでも、フォローし合える環境があるのはすごくいいところだと思います。
残業はまったくないわけではありませんが、過度にあることはないので、ライフワークバランスは取れていると感じます。デザインの仕事をしていたときは、アホみたいに忙しく、若いころは徹夜も珍しくありませんでした。現在も忙しいときは忙しいですが、全体のバランスはすごく取れていると思います。
お給料は、初心者で入っているのでそれほど高くはないし、前職から比べたら当然下がっていますが、これから資格を取って、さらに主任、サビ管となっていけば上がっていきますし、自分の努力次第で改善していけると思います。
給与体系や昇進制度を明確に説明してもらえており、ステップを踏むごとに給与が上がる土壌が整っていて、分かりやすく先を見越せる職場だと思います。
――未経験からの転職はどうでしたか?
森下
昔から料理などは好きだったので、すんなりと入っていけたと思います。
パン作りもデザインと同じで、「どうしたらお客様に手に取ってもらえるか」と、見た目などを考える工程はすごく面白いですし、未経験でも比較的スムーズに取り組んでいけたのでは、と思います。
障害者支援は、本当に初めての分野でしたが、入社時から受講した研修と、業務の中でもOJTで段階を踏んで教えてもらえました。
最初はまったく分からなかったことも、だんだん「こうすればいいんだな」「こういう対応を取ればいいんだな」とステップを踏んで理解していけたので、支援の面もスムーズに取り組めたのではないかと思います。
分からないこともまだたくさんありますが、基礎的なことは学べたので、大きく迷うことはなく、段階を踏んでこれたと感じてます。
これからさらにサービスの質を高めるためには、一人ひとり抱えている障害について、もっと深く知っていかなければならないと感じています。
逆に、未経験からのスタートで約一年、ゼロから働いたからこそ、自分に必要な部分をちゃんと理解できたので、今後は内部研修を受けたり、資格取得の勉強を進めることで穴埋めしていければと思っています。
SHIPは内部研修がすごく充実していますし、内部だけでなく外部の研修もあり、自分が勉強したいと思えばさせてもらえる環境があると思います。
――今後、どんな人と働きたい、またSHIPにはどんな人が向いていると思いますか?
森下
入社してみて、仕事をしていく上では、良いこともあれば大変なこともやっぱりあるので、大変なことがあってもポジティブな気持ちで取り組んでいける方と一緒に働きたいと思います。
エスプリの業務はパンの売り上げを上げていくという福祉の中でも特殊な部分がありますので、宣伝とか広告とかにも興味を持って、熱い気持ちでいっしょにやれる方がいれば嬉しく思います。
SHIPはキャリアパスに関する制度が整っているので、僕のような未経験から福祉業界に入る人も、安心して飛び込んで来れる環境はあるかなと思っています。
――最後に、福祉で長く働くには何が必要だと思うか教えてください。
森下
正直、まだ手探りで考えがあちこちに行っていますが、「人のために役に立ちたい」という気持ちがないと続かないのかなと感じます。相手があっての仕事なので、「自分だけ良ければいい」となってしまうとむずかしいのかなと思います。
独りよがりになりがちな部分がどうしてもあるので、自分の中で、立ち止まる機会を設けていかなければならないと、まだ一年弱ですが働いてみて感じるところです。
今まで自分が生きてきた50年の経験や価値観だけで物事を決めてしまうと、大きくハレーションが起きてしまうので、まわりの多様な意見を認めた上で最適な答えを探していけることが必要なスキルかと思います。
森下さん、ありがとうございました。
障害者支援は未経験から一年弱ということですが、とても頼もしさを感じるお話を聴かせていただきました。
デザインの経験を存分に活かしつつ、福祉職としてさらにステップアップして、エスプリを盛り上げていってもらえたらと思います。
障害福祉マンガ劇場「人生のてんかん記」作者・パープルカフェ主催・難治性てんかん当事者
元グループホーム(ラファミド八王子)職員・現在は自宅で仕事
国家資格:精神保健福祉士・社会福祉士