【職員インタビュー】「外食産業マネージャーが、未経験で福祉業界へ飛び込んでみた」笑プラス:越村さん
SHIPの生活介護「笑(えみ)プラス」で主任生活支援員として活躍されている越村さん
外食業界から福祉業界へ転職し、10年以上経験を積んでこられました。
その過程と、これからについてお話いただきました。
外食産業のマネージャーから福祉業界へ
――越村さんの職歴を簡単にお聞かせください。
越村
もともとは教職を考えていました。大学で高校の生物の教職課程は取っていて、資格は持っているんです。ただ、教職の採用試験には受からなくて。
そこで思い出されたのが、中学校のときのバスケット部の監督をしていた顧問の先生でした。先生が監督としてチームをまとめる様子、大勢の方向性をまとめて一つのチームを作り上げていく「マネジメント」に自分は魅力を感じました。
さらに、大学生のときに飲食のアルバイトをしていたということもあり、大学を卒業して、外食系大手のファミリーレストランで働き始めました。店舗配属の社員として1年半ほど働いて、店長になりました。
その後10~11年店長として同じグループ内の色々な業態のレストランで働き、最終的には、松屋や吉野家のようなカウンターレストランを4,5店舗ぐらいまとめるマネージャーになりました。
――順調にキャリアを重ねているように見えますね。
越村
そのときに結婚をしました。マネージャーとして4,5店舗を担当していると、ほとんど24時間関係なく電話がかかってきます。また、お休みもシフト制だったので、決まった休みを取るという感じではありませんでした。
それと、担当店舗に何かイレギュラーが発生するとどうしてもそちらを優先しなければならなくなります。独り身のときはそれでも良かったのですが、できれば予定が立てられる休みが欲しいなと思って退職することにしました。
その後、1年ほど別の会社で働いたあと、福祉業界に就職しました。高齢者介護をしている会社で、管理者候補という求人に応募して入りました。
――なぜ福祉業界に?
越村
より直接的に、人の役に立ちたい、頼りにされたい、という気持ちがありました。あと、今後は高齢者の方々を対象とした仕事の需要が高まるだろうなとも考えました。
私が入った会社は、訪問系の介護をメインにしているところでした。他にも、老人ホームや小規模多機能型居宅介護などの施設を持っていました。その中で、訪問入浴から始まって次にデイサービス、最後に認知症の方のためのグループホームの、いずれも管理者をやりました。
――未経験の業界、すんなり入っていけましたか?
越村
もちろん、新たに必要な知識などはありましたが、それらを覚えることを通して自分を成長させることができたと思っています。それと、人とのコミュニケーションが基盤となっている部分は本質的に前職と共通している気がしています。
SHIP入社のきっかけと現在の仕事
――その後、SHIPに入社するのですね。
越村
はい。その高齢者介護の会社で管理者からもっと上の役職にいくというのもあったかもしれないんですが、別の方向性でキャリアを積んでいきたいと思いました。また、その頃は家族との時間を大切にしたいと考えていたので、シフト休日ではなく、もっと計画的に安定した休日が取れる環境を望んでいました。
そのほか、SHIPのチャレンジングな姿勢というか、法人として前向きでポジティブなところには惹かれた、というのもあります。
あるとき、SHIPが主催する福祉業界の方々が集まる座談会のようなものに参加したことがあって、それが転職のキッカケになりました。高齢者介護とは違う、障害者支援という分野も視界に入ってきました。
高齢者介護は、現状を維持して生活することが目的のようなところがあります。生活を改善して動けるようになると、逆に介護度が下がって報酬が落ちてしまいます。せっかく色々と快適な生活を送ってもらえるように工夫しても、そういう結果になってしまうところにモチベーションを保つことの難しさを感じていました。
それに対して障害者支援は、利用者様一人ひとりに対して色々な支援を考えて、それが自分のやりがいにもつながる部分があって。やっぱり、利用者様に少しでも変化や成長が見られるのは嬉しく、自分にとって大事なところかなと思いました。
――SHIPでの現在のお仕事について聞かせてください。
越村
今(インタビューを受けている2024年5月)よりも少し前の話になりますが、担当している3~4名の利用者様の支援方針について、半期に1度の支援計画更新会議で決めていきます。そして、その計画に沿って具体的な支援方法を考えながら進めていくという仕事になります。
それを独りでやるのではなく、2人1組のチーム制を組んで進めていきます。もう一人のパートナーと一緒に、アセスメントをもとに支援方法を協議しながら実際の介入を進めていく流れをとっています。
そのほか、自分の中では特に前職でマネジメントに力を入れてやっていたこともあって、組織全体を見て動くことも多いです。
利用者様との関係やスタッフ間のコミュニケーションの不具合がないか、不安を抱えていやしないか、そういったことがあれば相談を受ける、といったことを積極的にするようにしています。
例えば、悩んでいそうなスタッフさんがいるときは、積極的にお話を聴かせてもらいます。少しお話しすることで解決につながることもあれば、ネガティブな気持ちが続いてしまう場合もあります。そういったときは風通しのよさを意識しながら、上司へとつないで、チームとして解決していくことを考えています。
この「組織全体を見て、組織がうまくいくように動く」というのは、ほぼ職業病だと思っています(笑)
現在の仕事のやりがい・大変だったこと
――仕事をしていて、どのあたりにやりがいを感じますか?
越村
正確なアセスメントを通して一人ひとりの特性をちゃんと理解すること、そして特性に合わせた支援を提供することで利用者様が学習を重ねて成長していく姿をみることが、すごくやりがいにつながります。
より取り組みやすい環境をつくって活動をサポートしたり、一日の見通しを立てながら安心して不安なく過ごされている姿を見ていると、この仕事をしていて良かったと感じることができます。
例えば、本当に小さなことなんですが、ボビンという糸を巻くための筒状の道具に紐を通す自立課題の作業があります。
このボビンをバラバラに置いておくと、いざひもを通すときに向きが気になってスムーズに取り組めなくなってしまいます。ですから、いったん同じ向きに整列させておくような環境調整をおこないます。すると、利用者様の気になる部分がなくなって取り組みやすくなります。
ご本人の特性に合わせて少しの工夫を丁寧にすることで、重度の知的障害や自閉症があってもスムーズに作業を進められるという、構造化支援の考え方にやりがいを感じます。
また、利用者様の「先の見通し」のつかない不安な状態を解消するために、「笑プラス」では『トランジションエリア』というスケジュールを確認する場所を設けています。
トランジションエリアのスケジュールカードの提示方法にも工夫が必要で、一度にたくさんのカードを見せたり、毎日違ったカードを見せたりすると混乱させてしまいます。
そのため、「最初は1つだけ」そして「次はこれ」と、一人ひとりの想像力に合わせて提示する枚数を調整することで、スケジュール通りに過ごせるようになっていきます。
このように利用者様一人ひとりの特性に合わせた環境をつくることで、安心して落ち着いて過ごせる時間が増えていく様子をみると、「やって良かった!」のやりがいにつながります。
――逆に、大変だったことはありますか?
越村
入社して3か月ぐらいのときだったと思います。利用者様が机を揺らす行動をされていて、「なんでこういう行動をされるのだろう・・・?」と分からなくて。自分の支援の方法が悪かったのかと考え込んでしまうことがありました。
でも、気兼ねなく相談できるスタッフさんがいたので相談してみました。
そして気づいたことは、この仕事は最初から答えが決まっていることってとても少ないということ。だから、「まずやってみて」「結果こうだったら、次はこうしてみる」の積み重ねが大事だということです。
何より、後ろ向きにくよくよと考え込んで、何もできなくなってしまうようなことは避けたかったので、とにかく何か行動することで、それを前向きに捉えられるようになったことは自分にとって大きかったです。
力を入れている支援・今後の目標について
――「笑プラス」ではどんな利用者様が多くいらっしゃるのですか?
越村
基本的には、障害支援区分が5~6の「重度障害者」というカテゴリーに入ります。知的な障害や自閉症があって発語が難しい方が多いです。
そういった利用者様とコミュニケーションを取るためには、できるだけ視覚的に伝えるようにして、言葉のやり取りはあまりしないようにしています。
例えば、私たちスタッフが首から下げている『コミュニケーションカード』というものを使って、「散歩」とか「トイレ」のカードを指でタップしてもらうことで意思疎通を図ったりしています。
――主任になってから、さらに力を入れていることはありますか?
越村
一番は、「笑プラス」という事業所のスタッフ全員が助け合っていく仕組みをつくることです。
もちろん、担当スタッフが個別に支援を考え、進めていくことは大前提ですが、「担当じゃないから分からない」ではなくて、支援内容をみんなで共有して、困っていたらみんなで助けられるように、ということを心がけています。
また、すぐ話し合える雰囲気も重要ですね。最終的には管理者に判断を委ねることも必要ですが、できるだけ役職などの壁はつくりたくないですね。
そういった「担当者しか知らない」という縦割り状態をなくすために、一日の始まりと終わりには「朝礼」「終礼」で情報共有をしています。そして新しい取り組みをするときには、そこでスタッフ全員に周知するようにしています。
また、月に6回、ケース会議をしています。1回のケース会議で3名~4名の支援内容を共有しています。日々の細かい支援について「こういうことをしています」「ここが困っています」といったことを丁寧に検討していきます。
さらに、2人1組のチーム単位でのミーティングを月に2回ほどおこなっていて、よりきめ細かく情報共有の精度を上げています。
その上で、2か月に1回、管理者との進捗確認ミーティングをおこなっており、支援の方向性や細かな取り組みについてのフィードバックを得る機会をつくっています。
――今後の長期的な目標はありますか?
越村
直近の長期目標としては、やはり管理者、サービス管理責任者になることですね。昨年、サービス管理責任者基礎研修を受けさせていただきました。
もっと大きなスパンで考えると、今までの自分のキャリアを総括していく中で「人とのコミュニケーション」がテーマになっていることに気づきました。ですから、人に対して、何か自分が持っているものを伝えていくようなことをしていきたいです。
もともとは先生になりたかったこともあり、自分を見て、あるいは自分と接して、何か少しでも前向きになってもらえるような、そんな人間になりたいです。
「笑プラス」の魅力と課題
――「笑プラス」の職場の雰囲気、魅力などを教えてください。
越村
独りで行き詰ったり悩んだりすることはなく、そんなときには声をかけてくれたり、話しかけやすい雰囲気をつくってくれるところは魅力ですね。
暗い雰囲気はなくて、明るく元気にみんなやっている感じもいいですね。
――逆に、「笑プラス」だけに限らず、SHIPの抱える課題などありましたら教えてください。
越村
ファミレスという業態を経験したからなおさら強く思うのかもしれないのですが、正社員ではないパートさんにも役職というか、キャリアを積んでいけるようになって、お給料にもそれがより反映されるともっといいかもしれないなと思います。
ファミレスでは正社員とパートさんの間にはあまり差がなくて、より向上していきたいという人には色々と教えて、その分役職にも就いてもらってやりがいを感じてもらったりしていました。
そうすると、「この地域には、こんな素敵なパートさんが活躍している」と、お客様からの信頼感もあがり、それがご本人にとってのやりがいになり、モチベーションが高まって、離職率の低下につながったりもしました。
また、パートさんにも様々な重要な仕事をお任せして、ご本人の仕事の幅を広げる機会を多くしても良いかもしれません。
SHIPに向いている人、一緒に働きたい人
――越村さんが思う、SHIPに向いている人、一緒に働きたい人を教えてください。
越村
100パーセントの正解はない、ということが受け容れられる人ですね。
これがいいと思ってもやってみたら全然違ったとか、やりながら試行錯誤していって、変化を恐れず前向きに積み上げていける人は、向いていると思います。
個人的に一緒に働きたい人は、SHIPに向いている人と似ているんですが、好奇心を持って明るく前向きに取り組める人です。
「こうやりたい!」と意欲的に取り組んで、「こうでした!」「上手くいきませんでした!」というやり取りができると嬉しいですね。
その人に成長してもらいたい想いもそれだけ強くなりますので。
――この記事を読んでSHIPに興味を持ってくれた人へ、何かメッセージをお願いします。
越村
笑プラスは福祉業界では珍しく、計画的なお休みの取得ができる職場です。
自分にはまだ小さな子どもがいるので、自分の生活スタイルをつくることができるのはありがたいです。
また、仕事とプライベートの区分けもきっちりつけやすいところも助かっています。
タスクを管理しながら「今日の自分の仕事はここまで!」と計画的に仕事を進められるので、自分が決めた時間にパッと上がって次の予定も組みやすいと感じています。
また、パートさんを含めてチーム制で分かれており、チーム内で助け合っていくことで、支援についてのヒントをいただけたりして、チーム一体となって、利用者様の支援を組み立てていける職場です。
仕事とプライベートをしっかり分けて仕事がしたい、または、職場の仲間と一丸となって仕事に向き合いたい、と考えている方には、ぜひおススメしたい職場です。
越村さん、ありがとうございました!
前職でのマネジメントのスキルを生かして、越村さんの目標の実現に向けて、これからも頑張ってください!
フリーランス/リワークトレーナー/タスク管理習得支援ツール「タスクペディア」原作者