【育成担当インタビュー】「現場監督から福祉のプロへ:48歳からの挑戦」SHIP本部 中村さん

SHIPで重度グループホームの育成担当をしている中村さん、

住宅建築の現場監督から、未経験で福祉業界へ転身されました。

その過程と、これからについてお話いただきました。

 

現場監督から、48歳で福祉へ転身

――福祉業界に転職して、最初に直面した苦労について教えてください。

 

中村

私は48歳で建築業界から福祉業界に転職しました。もともとは新築の注文住宅を手がける会社で働いていました。「現場に出たい!」と周囲の心配を押し切って現場監督になりました。

体力的には問題なく、定年まで現場でやっていけそうだったのですが、それでも年齢とともに体は変化し、何かあってお施主様に迷惑をかけてからでは遅いと転職を決意し、福祉の世界へ足を踏み入れることにしました。

 

最初は知的障害者の方が暮らす障害者支援施設に入職しました。その当時は右も左も分からない状態で、強度行動障害の利用者様への対応がとくに大変でした。

宿直(夜勤とは少し違う形態の勤務)では、20名の利用者様を一人で対応するため寝る暇はありませんでした。利用者様に物を投げつけられたり、叩かれたりと、これまで経験したことのない世界に戸惑いがありました。

 

強度行動障害とは?

○ 自分の体を叩いたり食べられないものを口に入れる、危険につながる飛び出しなど、本人の健康を損ねる行動

○ 他人を叩いたり物を壊す、大泣きが何時間も続くなど、周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動

○ このような行動が著しく高い頻度で起こるため、継続的に特別に配慮された支援が必要になっている状態

 

とくに難しかったのは、利用者様の行動の裏にある障害の特性や気持ちを理解することでした。

例えば、ある利用者様は突然大声を出したり、物を投げたりすることがありましたが、それは何らかの不安や不快感の表れだと後から分かりました。

 

初めの頃はただ混乱するばかりでしたが、他スタッフのサポート、少しずつ利用者様の世界を理解できるようになりました。

すると、利用者様の純粋な行動や笑顔を見ることで救われた気持ちになり、次第にこの仕事に魅了されていきました。そして、未経験でもまずは利用者様の個性に向き合う姿勢があれば、この世界でやっていけると確信しました。

 

また、SHIPに転職してからは、内部、外部研修を通して障害の方々の理解がより深まり、障害者支援の面白さややりがいを実感しました。

 

 

障害特性の理解などもカバーするグループ研修

――新人研修ではどのような内容が行われていますか?

 

中村

現在、新人研修は合同形式でおこなっています。同じ時期に入社するスタッフが増えたため、3~6名のグループで実施しています。研修は全3回にわたり、理念や行動規範などの確認、障害特性の理解などを中心におこないます。

組織の決まりを確認する講義内容は堅苦しく集中が続きにくい部分ですが、障害特性など支援に関する内容は、利用者様の具体的な事例を交えた動画などを取り入れることで、より楽しく学べ、現場で応用ができるように工夫を重ねています。新人同士の交流が深まる場にもなっています。

ある新人スタッフは研修中に「利用者様の障害特性について全く知らなかったけれど、具体例を聞くことでイメージが湧き、支援の方向性が分かった」と話してくれました。このような声を聞くと、研修を開催する意義を実感します。

 

重度支援の鍵は柔軟性、仕組み化

――重度の知的障害者への支援には、どのようなスキルや資質が必要でしょうか?

 

中村

未経験でも問題ありません。最も大切なのは障害者について知りたい、学びたいという気持ちです。

重度グループホームでは多くのスタッフと協力して支援をおこなうので、コミュニケーション能力や柔軟性が必要です。自分の考えを押し付けるのではなく、チームとして支援を組み立てる姿勢がとても大切になってきます。

私自身、以前は白黒はっきりさせたいタイプでしたが、福祉の現場で働くようになると、白寄りのグレーから、黒寄りのグレーまでというように、自分のこだわりを手放せる柔軟性の大切さを実感しています。

 

さらに、「意識を変える」のではなく「仕組みを変える」という考え方も重要だと感じています。

忙しいときは意識が目の前の業務に集中してしまいがちです。そんなときに「意識を変えよう」と考えてもなかなかうまくいきません。どんな状態であっても、一定の質を保つような仕組みの必要性を感じています。

 

働く上で気を付けていただきたい点は、体調管理です。

私が担当しているグループホームは、重度の利用者様が暮らしていますので、食事や排泄などの日常生活に不可欠な行動に支援が必要です。

シフトに穴があいてしまうと現場がまわらず、利用者様にご迷惑をかけてしまうことになりかねません。早番、遅番、夜勤という変則的な業務時間となりますので体調管理がとても大切になってきます。

 

また、利用者様の体調変化などで病院へお連れすることがあるため、自動車の運転ができることは必須となっています。

そういったことはありますが、まずは障害者について知りたい、学びたい気持ちと柔軟性があれば、色々な課題はクリアできていくと思います。

 

 

「実際に役に立つ」研修を提供しています

――おすすめの研修はありますか?

 

中村

チーム支援を行う上で、アサーション(対等な関係を築くコミュニケーションスキル)研修はとくにおすすめです。

私も初めて受講した際、自分のコミュニケーション方法を見直す良いきっかけになりました。多くのスタッフがこの研修を通じて、自分の考えや感情を適切に伝えるスキルを身につけています。

 

また、自閉症支援に関する基本的な研修も重要です。何度受けても新たな気づきがあります。

他には、行動観察を学ぶ研修も役立ちます。利用者様の特性を正しく理解し、それに基づいて支援を組み立てる方法を学ぶことができます。

座学だけでなくグループワークを取り入れることで、スタッフ同士の知識共有も進みます。

 

 

――支援者の育成において大切にしていることは何ですか?

 

中村

重度障害を持つ方々の多くは、言語での表現が難しいため、支援者であるスタッフが先回りしてしまいがちです。それは優しさゆえの行動かもしれませんが、利用者様の成長を妨げてしまうことにもなります。

支援者が何でもしてしまうのではなく、利用者様ご自身のできることを増やし、ご自分の人生に積極的に参加できるように支援することが重要だと考えています。

 

スタッフにも同じことが言えます。できる部分を任せることで成長を促し、できそうな部分は一緒に考えながら個々の強みを活かせるようサポートしています。

主役は利用者様であり、そのサポートをおこなう支援者が利用者様の人生を豊かにする一助となることを願っています。

例えば、ある利用者様が日常生活の中で、自分でできることを増やしていく過程を見守りながら、スタッフ自身も「支援の仕方次第でこんなに変わるのか」と驚いたエピソードがあります。

こうした経験が支援者のモチベーションにも繋がっていると感じます。

 

 

研修後のそれぞれの課題

――研修前後の受講者の変化について教えてください。

 

中村

研修を受けたスタッフの中には、大きく変わる方もいます。自閉症の特性を根拠とした支援方法を学ぶことで、利用者様の成長を実感し、支援の質が向上するケースが多いです。

一方で、学んだ知識を現場に落とし込む際に戸惑うスタッフもいます。たとえば、利用者様が洗濯ばさみで遊んでいるから、洗濯物を干すのができそうだと考えたとします。

では、自分の洗濯物をピンチハンガーに干すまでにどう行動を組み立てたらいいのか、その間のプロセスを考えるのが難しかったりします。

理論は分かっていても、現場で具体的な支援に落とし込むことが難しい・・・。こうした課題に対しては、具体的な方法を一緒に考えながら支援を組み立てられるようにしています。

 

 

他の福祉事業者との違い

――同業他社との差別化のポイントは何でしょうか?

 

中村

強度行動障害の方を受け入れているグループホームであること、専門性のある研修の充実が大きな特長です。強度行動障害を持つ人たちを積極的に受け入れるためには専門的なスキルが必要になります。

このような利用者様を受け入れられるグループホームは地域にはまだ少ないため、我々が担う役割は非常に大きいと感じています。

また、スタッフ同士が支え合いながら支援をおこなう文化も大切にしています。利用者様一人ひとりが成長できる環境を整えることで、可能性を最大限に引き出すことを目指しています。

 

 

――改善したい点や課題について教えてください。

 

中村

情報共有の仕組みをより充実させたいと考えています。とくに非常勤スタッフへの研修機会が限られているため、利用者様の特性を深く理解してもらう機会を増やしたいです。

また、チーム支援の強化も課題です。支援者間での価値観の違いや世代間ギャップを埋めるための仕組みづくりが必要だと感じています。

施設のハード面についても改善の余地があります。より広いスペースや快適な環境を提供することで、利用者様もスタッフも過ごしやすい環境を目指したいと考えています。

 

 

求職者へのメッセージ

――最後に、求職者へのメッセージをお願いします。

 

中村

福祉業界は社会的意義のとても大きい仕事です。とくに、強度行動障害を持つ方々を受け入れることは大きな挑戦ですが、その分、やりがいもあります。

重度知的障害や自閉症を持つ方々は、それぞれ自分なりの世界観があって、とっても魅力的な人たちです。

一緒に働く中で、その素晴らしさを発見し、自分自身も成長できる環境があります。その素敵さを一緒に実感できる人が増えると嬉しいなと思います。

 

 


 

ありがとうございます!
挑戦を恐れず、利用者様の成長を支え続ける中村さん、
これからも頑張ってください!

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