【職員インタビュー】みんなのパン作りをわかりやすく!「構造化の魔術師」の魔法の治具とは?!『エスプリ』安藤さん

就労継続支援B型エスプリで『構造化の魔術師』と呼ばれる安藤さんにお話をうかがいました。

エスプリは「利用者様がパン屋の主役になれる」支援を行っています。また地域でのパン教室なども行っています。パン作りの現場で大評判の「魔法の治具」とは?

スポーツ業界、出版業界など、福祉とは畑違いの経歴の持ち主。現在は62歳で、SHIPの職員の中でも年長ですが、パン作りに構造化に、毎日腕を振るっています。出版業界では企画、編集の仕事で、美術、デザイン関係の本に最も長く携わったそうです。そんな「ものづくり」の経験が今活かされているのかも?!

介護福祉士の資格をお持ちです。また、精神保健福祉士資格取得に向けて勉強中だそうです。

 

 

【家族の病気がきっかけで、福祉の世界へ】

--入社のきっかけを教えてください。

 

安藤:長い間、福祉とはまったく違う仕事をしてきましたが、福祉業界に入ったきっかけは、義理の父が認知症になったことです。そこで初めて「ケアマネージャー」という仕事を知って、やり取りの中で、面白そうと思ったというか、興味を持ちました。その後、介護のデイサービスで、1年半くらい働きました。

子どもたちが好きだったものですから、「障害を持った子どもたちと接してみたい」と思い、ちょうど放課後等デイサービス子笑の立ち上げのときに、職員募集の面接を受けて、SHIPに入りました。

でも最初はグループホームの配属になりました。ラファミド八王子で働いたあと、子笑に移動して、その後エスプリにきて、現在にいたります。子笑もやりたかったのですが、他にパンを作ってみたい気持ちもありました。自分の父親も職人なのですが、もともとものづくりが好きな性格ですね。

 

 

【みんなの「希望」を形にする「構造化の魔術師」】

--現在の仕事内容を教えてください。

 

安藤:エスプリの仕事ほぼ全部ですかね。現場に入って、労務の管理もしています。

パン作成全般、生地の練りこみや成型をしたり、窯に入れて焼いたり、またそれらの作業を利用者様に指導したり、生活面の相談に乗ったり。

あとは利用者様の社会生活や作業能力についてのアセスメントや評価、労務管理一般、請求書、個別支援計画、新商品の企画、新規利用者獲得のための営業、秋川店でのイベント企画などです。

 

 

--大忙しですね。そんな中で、『構造化の魔術師』と呼ばれる由縁を教えてください。

 

安藤:名づけたのは職員の森田さんなので、理由を聞いてきました。

「利用者のHさんが『私の、こんな道具があったらパン作りが上手くいくのにな、という希望をすぐに形にしてくれる安藤さんは魔法使いだね』としみじみうれしそうに言っていました。Hさん以外でも、みんなの『こんな道具があったらいいな』という希望をすぐに形にして、しかもその方に合ったものを作ってくれるところが、『構造化の魔術師』の由縁です」

だそうです。自分で言うと恥ずかしいですね、魔術師でも何でもないんですけどね(笑)。

 

 

--具体的には、どういう治具を作ったのでしょうか。

 

安藤:「あんどうピザ君 大」「ロールパン」「あんどうまるめ君」「クッキー」「スコーン」など、それぞれ生地の大きさや高さを同じにできたり、生地をまるめやすくしたりできます。全部で今、7~10個くらいありますね。

 

 

--おもしろい名前の治具もありますね。治具の名前は誰がつけているのですか?

 

安藤:自分でつけています(笑)。何でこういう名前なのかと聞かれることはあるのですが、まずインパクトがあるじゃないですか。

あとは、「治具を作ったら自分の名前がつけられるんだよ」みたいな。自分の他の人にも、作ってもらいたいという思いですね。

パン教室でも使っていますが、評判もいいので、今後は販売しようかとも考えています。

今までの一番のヒット作は「あんどうつつむ君」ですね。「やりやすい」「分かりやすい」という声が多く、パン教室を開いても、あれを使うと初めての人でも簡単にできちゃうというのが、目に見えて分かります。いつもつつむ君だけで10枚くらいは用意しますね。

製作費も、1枚120円くらいで、費用対効果もとてもいいです。材料のほとんどは100均で買った下敷きやテープなどです。

 

 

--治具の他の構造化はどんなことを行っていますか。

 

安藤:例えばホワイトボードですが、その日誰が何を作るかなどの予定が分かりやすくなっています。

番重のならべ方、パンの置き方など。

作業の班分けもAB班とCD班で区分して明瞭化しています。

冷蔵庫も番号をつけて何が入っているのか分かりやすく明記しています。

あとは、利用者様だけでなく、職員用の構造化ボードもあります。

他に、パーティションを使って環境を分けて、作業の個別対応ができるようにしています。3カ所くらいありますね。

個別対応の事例「イヤーマフの活用!不安を軽減して自分のペースで作業する方法とは?

 

現在は新型コロナウイルス感染対策のため、2階の食堂は密になるので使えないので、広い1階の作業場で食事を取ってもらっていますが、空いた2階で洗濯物を干したり、アクセサリーを作ったりしています。

構造化に関しては、生活介護笑プラス原田さんがサービス管理責任者だったころに子笑にいたのですが、その時の構造化スケジュールを組んだり、利用者様の個別の活動スペースや個別の活動スケジュール、ワークシステムを作ったり、当時の子笑の構造化にはほぼ自分が関わってやっていました。

子笑での経験をエスプリでも活かせています。また、笑プラスにはフォーマルアセスメント材料がそろっているので、勉強したいなと思っています。

 

 

 

【「根拠ある個別支援」のためのアセスメントと構造化の確立が目標】

――今後の目標や課題を教えてください。

 

安藤:やっぱり根拠のある個別支援を提供したい、そのためにインフォーマルなアセスメントを独自で確立していきたいです。そして新しい利用者様が入ったときに、どういうアセスメントをしたらよいのかを確立したいですね。

あとは、パン作りでも、レシピ表を利用者様が分かりやすいように整理したいです。まずは、あんぱん、クリームパン、ジャムパンなど、定番の商品のレシピを常に利用者様が見れるように構造化していかなければと思い、今年から進めているところです。

レシピというのは結局は、利用者様のために作らなければならないのに、現状は職員のためのものになっているのです。まず職員が作り方が分からないのでレシピを入れている状態なので。

それを職員が教えながら、今度は利用者様に作ってもらわなければいけないので、利用者様に分かりやすいレシピを作ってそろえていきたいという目標があります。

また、利用者様の工賃を上げていきたいですね。

ただ現状だと、どうしても売り上げを上げていかないと利用者様の工賃を上げられないです。工賃を上げるには、パン作りと売り上げを重視せざるを得ないので、利用者様と関わっていく中で、どうしてもないがしろになる部分は出てきてしまいます。

利用者様あっての事業所で、パンがあっての事業所では本来ないので、その辺はジレンマです。

 

 

 

【みんなが一丸となれる職場、自分のやりたいことが実現できる職場】

――職場の雰囲気を教えてください。

 

安藤:売り上げの目標値や、利用者様の目標に対して、みんなが一丸となって取り組んでいる雰囲気だと思います。

売り上げも上がってきているのですが、その要因としてやっぱり新商品の開発、秋川店のイベントの企画があると思います。企画する人、商品を開発する人、それを実際に作って試食してお店に出すまで、かなりの労力を使って、取り組んでいます。

企画などの他に、朝の仕込み、利用者様が来て午前中、午後と、毎日の業務も忙しい日々なので、正直もうちょっと人手を増やして余裕を持たせたいなあというところはあります。

やりがいは確実にありますので、興味のある人にはぜひ、就職してきてほしいですね。

 

 

――どんな人と働きたい、またどんな人がSHIPに向いていると思いますか?

 

安藤:やっぱり基本的に、利用者様の笑顔を見たいというのが一番でしょう。

それと、エスプリの場合はものづくりが好きな人などですかね。今、職員からも利用者様からも、こういうパンを作りたいなと自分のアイディアを出してもらって新商品の開発を積極的に行っています。提案がある前は、ケーキなどはなかったですね。自分で作ってみたいパンやお菓子など、希望があれば自由に企画できます。

他にたとえば今後、移動販売などもやってみたいし、「エスプリサポートクラブ」などもを作っていこうと考えています。会員を集めて年会費を取って、特典としてパンを配達や、新商品を無料で試食してもらうなど、新たな集客方法を考えています。そういう経営の方にもアイディアがある人が一緒に働いてくれたらいいですね。

自分のアイディアが実現できる可能性の高い事業所だと思うので、ここでステップアップしてもらえればうれしいと思いますね。

 

 


安藤さん、ありがとうございました。

エスプリができたころを知る身としては、構造化がとても進んでいて驚きました。

また、利用者様をパン屋の主役に考えての、現状の課題も目標もはっきり見えているのを感じました。

パン作りや販売も仕事なので、どうしても職員がやりやすくとなってしまいがちだと思いますが、その中で利用者様に分かりやすくを第一に考え実践しようとしているのは、とても頼もしいく感じます。

コロナが落ち着いたら、ぜひともいろんな人に見学にきてもらいたいですね。