【職員インタビュー】「利用者様と共に成長する」ため新しい道を日々模索!『笑プラス』紙谷一さん

SHIPの生活介護笑プラスで生活支援員をしている紙谷一さんにインタビューしました。

大学の福祉学部を卒業後、地域活動支援センターで非常勤勤務をしたのち、特定非営利活動法人エスエスエスに入社。SHIPではサクレ江戸川エスプリドゥののち、生活介護笑プラスに異動。SHIPの職員の中でも古株です。精神保健福祉士と社会福祉士の資格をお持ちです。

支援業務のかたわら『支援をあきらめ騎士(ナイト)』としても活動中。YouTubeで重度知的障害者支援の支援事例などを動画で紹介してくれています。

『支援をあきらめ騎士(ナイト)』についてのインタビューはこちら ↓ ↓

重度知的障害者支援の取り組み『支援をあきらめ騎士(ナイト)』にインタビュー | 社会福祉法人SHIP (swsc-ship.com)

 

【専門的なキャリアを求めてSHIPへ】

--入社のきっかけを教えてください。

 

紙谷:大学の福祉系の学部を卒業後、最初は地域活動支援センターで非常勤で働いたのですが、わりとすぐにエスエスエスの生活支援員募集を見つけて興味を持ち、入社しました。路上生活者の支援を5年して、いずれはもっと専門的なキャリア形成ができる仕事につきたいと思うようになりました。

そのころにエスエスエスの障害者支援事業としてラファミド八王子上田さんが立ち上げ、声をかけられました。でも八王子に通うのは遠くて大変なので断ったのですが、その後にSHIPができて、サクレ江戸川の開設の際に再び声をかけてもらって、異動しました。

学生のころから、引っ込み思案だし、営業職は何となく無理っぽいなと思っていて、専門職に就きたいという思いがありました。

サクレ江戸川では3年働き、主任世話人までになりました。サービス管理責任者の資格が取れるようになったので研修を受け、その後エスプリドゥでサービス管理責任者として3年働きました。

もともとは知的障害者の分野にはあまり興味がなかったのですが、サクレやエスプリドゥで中軽度の知的障害・発達障害のある利用者様と関わり、またSHIPがASD(自閉症スペクトラム)研修に力を入れていたのもあって、興味を持ち始めました。

そして笑プラスに異動し、重度知的障害者の支援に取り組むようになって2年経ったところです。SHIPでは管理職の方を除けば、実は一番の古株ですね。

 

 

【重度知的障害者とのコミュニケーションのツール作り】

--現在の仕事内容を教えてください。

 

紙谷:個別支援計画に沿って、利用者様ひとりひとりに合った日中活動の支援を提供しているのですが、重度の利用者様とは特に、日々お互いが分かりやすいコミュニケーションのツールを作ることに取り組んでいます。

重度だと言語が苦手な方が多く、身体を引っ張ったり騒いだりといった方法で伝えようとしてくる場合も多いです。

なので、絵や写真を使ったカードなど、視覚的な情報でのやりとりがメインになりますが、その上で、お互いにケガなく、安定して穏やかに日々過ごせるようにと考えています。

 

 

 

--重度障害者支援と中軽度障害者支援の違いは感じますか。

 

紙谷:とても感じますね。一番はやはり「コミュニケーション」です。

中軽度は言語が伝わるし、向こうからも言ってくるし、理解には個人差はありますけれど、基本は一般的な言葉の使い方と一緒じゃないですか。だから、中軽度の場合は、コミュニケーションが上手くできないといっても、本人のわがままによるものだとか、重度とは問題が別ですね。

重度だと、もともと言葉がない場合が多いから、何を伝えたいか簡単には分からないです。こちらからの発信を工夫して、利用者様からの発信もうながし、またスケジュールの見返しなどで利用者様が伝えたいことを分析したりしています。

言葉の代わりに「たたく」といった行為がコミュニケーション方法の人もいますが、本人に悪意はなくても、相手にとっては暴力で、問題が生じるので、別の表現方法が獲得できるように取り組みを続けています。

 

【創造性と面白さを感じられる仕事】

――仕事のやりがいと、今後の目標を教えてください。

 

紙谷:仕事のやりがいは「創造性がある」ことですかね。

利用者様の様子を探りながら、日中活動の課題を作ったりコミュニケーションのツールを作ったりしています。それを利用者様が練習して習得できると「ああ、コミュニケーションが通じたな」と感じます。

通じなかった場合も、失敗だけで終わらずに「こういうことを考えたんだろうな」と色々推測してまた次のツール作りにつなげていけるので、僕は面白いなと思います。

仕事の目標は、「利用者様と共に成長する」です。

笑プラスのアセスメントは専門家なフォーマルアセスメントとインフォーマルアセスメントで個人個人の障害特性や関心などを把握しているので、そこでご本人にとっての芽生えがあると思います。それを利用者様が伸ばしていくことを、必要なツールを開発しながら支援し、同時に自分の専門性も伸ばしていきたいですね。

重度障害者支援の現場では、同じことのくり返しや、膠着状態になっているケースも多いかと思います。それに疑問を感じる人は、笑プラスの支援に興味が持てるのではないかと思います。

毎日、試行錯誤のくり返しで、利用者様たちの習得のレベルも個人個人で違って大変ですが、その簡単にはいかないけれど、新しい発見が日々あり、いろんな道が模索できることが、面白いと感じられる部分ではないでしょうか。

 

 

【笑プラスは職員全員が勉強熱心、我慢せずに話せるチーム】

――職場の働きやすさを教えてください。

 

紙谷:雰囲気はいいですよ。パートさん、正職員含めてみんな勉強熱心です。

笑プラスの開設前から内部研修に力を入れてもらっているのですが、全員が素直に受けて学習して、実践に活かせていると思います。

重度支援未経験の人が多いのもあると思うのですが、分からないなら分からないなりに研修に沿って一所懸命にやっているなと思います。みんな方向性を違えないと感じます。

また、みんな同じ理念のもとチームで支援をできているのが良い点です。

笑プラスでは視覚的支援を中心に推奨していますけれど、「話せばわかる」「気持ちをこめて接すればわかる」など、関係性の支援を押す人も世の中にはたくさんいます。

理念に沿って採用する支援方法も統一できる、というわけでもないのですが、自分なりの支援感を持ってゆずらずギスギスする、といったことは笑プラスではないなと思います。

 

 

――職場の大変なところ、改善してほしいところはありますか。

 

紙谷:職場に改善して欲しいところは僕はあまりないですけれど、大変は大変、みなさんのご想像どおり大変ですよ。利用者様にたたかれたり眼鏡を取られたりもありますよ。それもコミュニケーションの一環で、上手く表現できていないけれど、行動には何らかの理由があるので、それを探ります。

でも、肉体的にはけっこう疲れるし、ダメージもあり、利用者様の気分によっては率直に大変です。それにともなって危機管理をするので神経を使うのも疲れますね。でもそれが仕事なので。

実際の支援を見ていて、「それはやっちゃダメですよ」というのは伝わらないなと僕は思います。言葉が伝わらない、理解できないからから、というのもありますが、ただやりたいからやってしまうという人もいます。それも、時間をかけて違うアプローチで伝わる方法を探しています。あきらめないとです。

 

 

――どんな人と働きたい、もしくはどんな人がSHIPに向いていると思いますか。

 

紙谷:多分、「忍耐力」は必要だと思います。さっき話したように、肉体的にも精神的にも大変なことは日々ありますので。

それと、重度の知的障害、自閉症の方の行動を見て、またその行動はこういう考えでしたのだろうなと推察して、素直に面白いと言える人がいいですね。

何でそんなことをするのかよく分からない行動もありますから、ダメな人はダメなのだろうと思います。

また、思考に柔軟性がある人は助かりますね。他の人が提案する支援に一理あるかなと思える人がいいです。どっちが正解かは、実際にやってみないと分からないですからね。

それから、SHIPに向いていると思うのは、勢いがある人ですね。『あきらめ騎士(ナイト)』もそうですが、試そうとしたらやらせてもらえる職場ですし、とにかく、やれる人がいいと思います。うじうじ考えないでね。

 

 

――福祉で長く働くために必要なことは何だと思いますか。

 

紙谷:僕の場合は、長くといっても福祉の中でも仕事が何度か変わっていますが。まあこれからも辞めたいとかは思わないですね。その理由は、環境に恵まれているというのが一番なんですけれどね。

その中でも思うのは「負の感情を、ためずにまわりに話すことができる」です。

虐待防止の兼ね合いもあって、簡単に言える話ではないですが、支援の中で感じるイライラを我慢せずに、たまに職員間で発散できるくらいがいいと思います。それには、もう自分が話しちゃうことだと思います。だれかが話すと、話していい雰囲気になるじゃないですか。

重度障害者支援の場では特にだと思いますが、利用者様はこちらがどう感じるかは関係なく、自分のしたいように行動します。ご本人は理由があってしているのですが、こちらからしたら理不尽にたたかれ、眼鏡を取られるわけです。あんなことがあって腹が立ったよ、みたいな話はしてもいいと思います。

笑プラスは話せる環境ですね。自分が一番口が悪いんじゃないかくらいに感じます(笑)。冗談のような感じで、みんなが笑っているからいいかなと思っています。

もちろん、虐待防止の研修にそって支援を行ってはいますが、規則だけだと、続けていくのはつらいんじゃないかな。

まわりに話せずにためこむと、「まわりが不満なく頑張っているからそうやらなきゃいけないのかな、うまくいかないのも自分のせいかな」と、自分の人間性に問題があるのでは、という思考になってしまいます。それだと仕事は続かないし、続いてもつぶれちゃうかなと思います。我慢してためこむことで、逆に利用者様への虐待につながってしまうこともあるでしょうし。

ある程度、気持ちをゆるめて発散できることで、長く続くのではないかと思います。

 

 

 


紙谷さん、ありがとうございました。

重度知的障害者支援の現場ならではの大変さと、面白さが伝わるお話でした。

「コミュニケーションをあきらめない」ことが、紙谷さんと笑プラスの魅力であり、SHIPの目指す「重度知的障害者が地域で暮らせる社会」にもつながるのだろうと感じました。

またSHIPは逆待防止研修も毎年力を入れて行っていますが、それに加えて笑プラスでは、職員間で気軽にガス抜きできることも、虐待を防ぎ、よりよい支援を行うための要素となっているようです。

SHIPはこれからも重度知的障害者向け施設の開設を進めていきます。興味のある方は、ぜひ見学や、就職イベントにご参加ください!