【職員インタビュー】自閉症のお子さんに分かりやすく、将来を見据えた支援『子笑』出浦さん
放課後等デイサービス子笑の児童発達支援管理責任者(以下、児発管)の出浦さんへのインタビューの続きです。
入社のきっかけや、ワークライフバランスに関する前回のインタビュー記事はコチラ↓
出浦さんは子笑のオープニングスタッフで、ラファミド八王子の世話人も経て、現在は子笑の児発管として活躍されています。
今回は「子笑の魅力や今後の課題」について聞きました。
子笑を利用してみたいお子さんのご家族や、働いてみたい方にも、ぜひ読んでもらいたいです。
【子笑の児童支援の魅力】
――ずばり「子笑の魅力」を教えてください。
出浦:「一人ひとりに合わせた支援(個別対応)」「TEACCHプログラムなどにもとづく自閉症に特化した支援」「将来を見越した支援」です。
--では、ひとつずつくわしく聞かせてもらいましょう!
一人ひとりに合わせた支援
出浦:子笑の事業所理念は
「障害特性を踏まえ 一人ひとりに合った生活習慣を身につけることを支援し 社会生活の幅を広げる」
「発達段階を踏まえ 集団生活の中でコミュニケーション力を高め 将来までを見据えた社会生活の支援をする」
です。
そのため、職員全員でのアセスメントを重視し、「本人が意欲的に取り組めること」「毎回の通所でのスモールステップ」を考え、各通所ごとに、準備とふり返りを行っています。
お子さんは、たとえ障害名が同じでも、一人ひとりちがいます。
個々の障害特性や発達段階を考え、アセスメントを何度も行い、保護者の意思もくみ取りながら、本人の学習スタイルに合わせて個別の支援を行っています。
お子さんにとっての芽生えの部分を課題とします。
そして、発語や文字の理解などを考慮する他に、好きなキャラクターなど興味関心のあるものを取り入れて、分かりやすく意欲的に取り組めるように、ほぼ手作りの自立支援課題を提供しています。
通所後は職員全員で、お子さん一人ひとりがどうだったか話し合い、次回の通所時はどう準備するか考えます。
毎回決まったものを提供するわけではなく、プリントや自立支援課題、余暇活動の内容などは、その都度、個別に合わせて丁寧に準備しています。
また、個人での課題だけでなく、集団生活の場を活かし、発達段階を踏まえてグループワークなども取り入れています。
自閉症のお子さんに分かりやすい支援
出浦:特に自閉症スペクトラム(ASD)のお子さんが混乱せず理解しやすいようにTEACCHプログラムを取り入れています。
他に社会生活技能訓練(SST)や、行動分析なども積極的に取り入れています。
また、自閉症は言語より視覚情報が優先されることが多いので「視覚提示」を取りいれています。
文字が読めない場合は写真、イラストなど、お子さん一人ひとりの理解に合わせています。
「どこで」「なにを」するかという「場所」、目に見えない「時間」などは、わかりやすく「構造化」しています。
その際にも、たとえば時計はアナログなら理解できる、逆にデジタルなら理解できるなど、一人ひとりお子さんの理解に合わせています。
昨年、子笑の構造化の取り組みを、内田洋行教育総合研究所の「Webコラム学び場.Com」で紹介していただきました。
意外と知らない”環境作り”~特別支援教育の視点から~ – 教育ウォッチ | 学びの場.com
将来を見据えて、変化にも対応できるような支援
出浦:お子さんが落ち着いて過ごせる環境づくり、分かりやすいプログラムの提供を行っていますが、子笑を卒業した後の、就労継続支援事業所への通所や、障害をオープンにしての就労など、「お子さんの将来」を見据えて「変化に対応していける支援」も重要と考えています。
自閉症は「変化が苦手」なため、コロナ禍では、学校が急にお休みになってしまった、子笑にも行けないなど「いつもしていることができない」ことで、混乱してしまうお子さんは多いです。
常に同じ順番のスケジュールであれば落ち着くのかもしれませんが、現実には常に同じではいられません。
少しずつ変化に対応できるようなものをプログラムの中にあえて組み入れ、保護者とも連携しながら行っています。
【子笑の仕事について】
――現在の仕事内容を教えてください。
出浦:児発管の仕事を一部あげると、見学者対応、体験者のアセスメント、個別支援計画の策定と、計画に基づいた支援の進捗状況の確認、支援を実際に提供している現場職員へのアドバイスなどです。
また、保護者様や学校、自治体、病院、相談支援事業所など、関係機関との連絡調整もおこなっています。
――仕事のやりがい、または大変さや課題を教えてください。
出浦:子どもたち一人ひとり、職員一人ひとり、事業所全体、法人の今とこれからを考え、その中で自分自身がどう関わっていけるか、日々考えられることにやりがいを感じています。
そのために自分自身が学んでいくことが目標であり、課題でもあると思います。
大変なのは、毎日の業務の中で、イレギュラーなことも入ってくるので、その中で優先順位を常に考えながら対応する必要があることです。
また、支援には決まった正解がない中で、最良の結果を出せるよう、一つひとつの業務の質や量、継続性を考えながら動いていかなければいけません。
なおかつ今は、児発管として赴任してからの新しい業務と、コロナ対応が同時進行してきたので、常に気を張っている状態でもあります。
イレギュラーがあっても常に対応できるようにして、正解がない中で結果を出していくことは、大変であると同時に、やりがいでもあると感じています。
――「イレギュラー」とは、具体的には、新型コロナウイルス対応などですか。
出浦:コロナもそうですが、日常の中でたくさんあります。
成人の支援でもそうですが、たとえば子どもさんが急に倒れたり、けがをしたり、病院に緊急に連れて行かなければならなくなることや、お子さんの送迎中に車が接触してしまったということもありえます。
保護者のお迎えを待つお子さんを見ながら、送迎の職員からイレギュラーの連絡が来てその対応をしたり、お子さんの状態が良くなくて他のお子さんと接触しないようにしている中、急な電話対応をするといったことがありました。
状況によっては一人で同時に複数のことに対応しなければいけません。
通常業務としてお子さんを見ながらも、イレギュラーなことがあれば、すぐに対応し、他の職員へ指示する必要があるので、常に冷静にいられるように努めています。
【「新人へのサポート」と「研修の充実」が今後の課題】
――今後の課題や、取り組みたいことを教えてください。
出浦:新入社員へのサポートと、内部・外部での研修です。
4月から新しく職員が入社したのですが、今まではラファミド八王子でいっしょに働いた経験のある職員たちだったので、まったくの新人を、児発管として迎えるのは初めてです。
初心から、本当に一からサポートしていく気持ちでいます。新入社員に伝えていくことで、自分自身も学ばせてもらえる機会だと思っています。
そして職員みんなで成長していけるようにしたいですね。
内部研修はコロナ禍でここ2年むずかしかったのですが、今後、月1回で行っていく予定です。
新入社員には、それに加えて、毎月個人で参加できるオンライン内部研修も活用してもらいたいと思っています。
外部の有名な方の研修は、先日初めて、明星大学の竹内教授による行動分析の研修「気になる子どもの行動理解と対応」を受けることができました。
研修後に竹内先生からは
「今まで行った放課後等デイサービスの中で、子笑がいちばんよかった」
「一人ひとりに個別のアセスメントと対応をしていて、職員の対応も本当に温かみを感じた」
と大変うれしい言葉をいただけました。
今後も外部研修の機会を増やしていく予定です。またありがたいことに、明星大学の生徒さんを子笑で実習させてほしいというお話もありました。
――一番と評価されるなんてすごいですね!そしてさらに学ぶ機会を増やしているんですね。
・・・でも私、正直いうと勉強はきらいなんですよ(笑)。
入社前は、福祉の資格だと、ヘルパー2級だけで、介護福祉士や精神保健福祉士は持っていませんでした。
それで、SHIPに入社するときの履歴書に「資格を取れるよう学んでいきたい」と書いたのを覚えていますが入社後、実際に資格を取得できました。
勉強ぎらいの私でも、実際に学んでいきたいと思えるし、学べる会社だと思います。
【素直に学び、話し合える人と働きたい】
――最後に、どんな人と働きたい、またはどんな人がSHIPに向いていると思うか教えてください。
出浦:素直な人と働きたい、また向いているとも思います。
自分にも言えることですが、人間だれしも自分を守ろうと咄嗟に出る言葉や行動があると思います。もし間違ったことをしたなと思ったときに、そのままにせず、後からでも素直に伝え合える人と私は働きたいです。
それと「まわりから学ぶ」という点でも素直な姿勢は大事だと思います。
ひとつひとつ「これなんでだろう?」という視点で考えられたり、疑問が合ったらためらわずに伝え合えれば、事業所全体、会社全体にとっていいのではないかと思います。
また支援業務の中では、対人関係の中で大変なこともありますが、まわりにためらわずに相談できることが大切だと思います。
自分自身が素直に話せるようでありたいと思いますし、話せる職場環境を作っていくのが私の仕事であるとも思います。
まわりと学び合って成長を実感することで、この仕事を続けたいと思い、またまわりと相談し合うことで、私生活をふくめバランスをとって継続していけるのではないかと思います。
出浦さん、ありがとうございました。まさに、事業所理念のとおりに支援を行っていますね。
子笑のブログでは活動や、構造化や自立支援課題についても、写真つきでたくさん紹介されています。
さらに子笑の魅力が具体的に分かると思いますので、ぜひ、読んでいただきたいです!
障害福祉マンガ劇場「人生のてんかん記」作者・パープルカフェ主催・難治性てんかん当事者
元グループホーム(ラファミド八王子)職員・現在は自宅で仕事
国家資格:精神保健福祉士・社会福祉士