【職員インタビュー】「明るくて自由な雰囲気の中、その人にあった支援を考えるのがやりがい」グループホーム友 岩崎さん
「グループホーム友」 の岩崎(いわさき)さん、
福祉業界で長きにわたり経験を積み、SHIPへ入社されました。
その過程と、これからについてお話いただきました。
ソーシャルワーカーとして、病院から地域へ
――岩崎さんは、「グループホーム友」で働く前まで、どのようなことをされてきたのでしょうか。
岩崎
大学で社会福祉を専攻し、卒業した後、長野で精神科病院のデイケアでソーシャルワーカーとして5年勤務しました。
その後、神奈川の相談支援と就労継続支援B型の併設事業所、東京で相談支援と地域活動支援センターの併設事業所で相談支援専門員として10年程経験を積み、SHIPへ入社しました。
岩崎
福祉に興味を持ったのは、高校生のときです。当時、世間を騒がせた大きな事件があり、いずれも犯人の精神鑑定に多くの注目が集まったものでした。
事件の報道から犯人のその世界観に触れて「そんなこと、テレビドラマの中だけでなく現実に起こるのか」と思いました。そこから、犯罪心理学や精神保健福祉と心理学に興味を持つようになり、最終的には社会福祉を学ぼうと思い学部を選びました。
自分は、小さい頃から内向的な性格でした。自分から輪の中に入らず、輪の外で見ていて声をかけられたら混ざる、といったことが多かったです。そんな性格もあって、人間の内面でどんなことが起こっているのか興味を持ったのかもしれません。
大学に入学して社会福祉を学んでいて思ったことは「イメージよりは地味」というものでした。
精神科病院の実習に行くとき、それこそ大事件を起こすような人が独居房に閉じ込められているイメージをしていましたが、実際には全然そういうことはありませんでした。
今思えば当たり前なのですが、普通の人が来院して、医療の一環として淡々と治療を受けているだけなのです。治療の方針にのっとって受診していけば安定して社会生活が送れるんだと、ある意味新鮮に感じていました。
後年、就職して精神障害の当事者とお話するようになっても、さほど自分たちと変わらないという印象でした。
岩崎
大学卒業に向けて、本来であれば就職活動をするのが王道なのでしょうが、自分は就職活動をせず、精神保健福祉士と社会福祉士の2つの資格を取った後は、アルバイトのようなことをしていました。
そのとき、ゼミの仲間から誘われて精神科病院へ行き、デイケアでソーシャルワーカーとして働くことになりました。
デイケアとは、日々の生活のリズムを作るために通う場所です。デイケアでの仕事はレクリエーションが多くて好きでした。
大型免許を取り、マイクロバスを運転して遠出をしたり、近所の公園、バッティングセンター、カラオケ、花見など、色々なことを患者の皆さんと一緒にしました。
岩崎
いま考えると、一緒に取り組むことがいい意味で対等な関係性につながったのだと思います。
あるとき、自分が担当していた患者さんが入院されて急性期病棟の保護室に入ったのですが、担当の看護師との関係がうまくいっていないようでした。その患者さんにとっては、業務的な看護師との関係性に対等さを感じられず、どちらかというと上下関係があるように思えて、そこに抵抗感を覚えたのだと思います。
たらればの話になってしまいますが、病院でもみんなが対等感を意識して、患者さんたちを良い関係性を築いていれば、もっとうまくいったのではないかと振り返っています。
デイケアで5年程度勤務した後、神奈川で相談支援と就労継続支援B型の併設事業所で相談支援専門員として働き始めました。転職の理由は、妻と一緒に住もうと引っ越しをしたことです。相談支援の仕事とB型作業所の仕事が半々ずつくらいでした。
相談支援専門員の仕事は「連携と調整」がヘビー
――病院の仕事から、地域での相談支援や就労支援へシフトして、どのような違いを感じましたか?
岩崎
神奈川での相談支援の仕事は、地域の一般の市民の方々からの相談を受けることが多かったです。
たとえば、精神的な疾患を抱えた方の親御さんからの相談、役所の障害福祉課から紹介を受けたという人などの相談を受けていました。そしてヘルパーなどのサービスが必要なら、その手配をするような仕事をしていました。
就労継続支援B型の仕事は、お寺の多い地域だったこともあり、お寺の清掃などの仕事を障害者の皆さんと一緒にするなど、屋外の仕事が多かったです。
この事業所の所長はかなり個性的な人で、考えついた色々なことをすぐにそのまま口に出すタイプでした。小さい頃から内向的だった自分にとっては、「ここまで自由に振る舞っていいんだ」と、ある意味とても影響を受けた存在でした。
岩崎
それからまた引っ越しをして東京に移り住み、地域活動支援センターで働き始めました。
長野や神奈川のときと比べると東京は人口が圧倒的に多く、それに比例するように精神科病院も多く、同時に急性期(精神疾患の症状が激しく出る状態)の患者さんに対応する病院の多い地域にある地域活動支援センターで相談支援をしていました。
東京でのこの仕事はひと言、「ヘビー」でした・・・
ここでいうヘビーな仕事とは、高校生のときに思い浮かべていたような派手なものではありません。患者さんを取り巻く家族関係の調整から、必要な福祉サービスの導入に向けた調整、また精神疾患だけでなく身体的な内部疾患があると連携すべき機関は多岐に渡るため、そのやり取りはかなり複雑で大変でした。
患者さんと関わること自体はまったくストレスにならないのですが、当該センターの対象にならない人からの相談も多くあり、その場合は別の窓口やサービスへつないだりもしました。また、自分のセンターで対応することが難しそうならケースでは、障害福祉課の担当者や保健師さんと一緒に支援を考えていくなど、関係機関との連絡調整はかなり大変でした。
「やっててよかった!」
――SHIPに入社するきっかけを教えてください。
岩崎
それまではずっと相談支援専門員として、軽度の障害をお持ちの人たちと接してきました。でもせっかく資格を持っているので、重度の障害をお持ちの方とも関わってみたいと思ったことがきっかけです。
また、相談支援専門員は主にデスクワークが多かったのですが、デイケアのときのように「体を動かしたい」と思ったことも転職の理由の1つです。
実は、SHIPの他にも家の近くの就労移行支援事業所の採用面接も受けていました。でも、そこだと今までと同じような仕事になりそうだったので、「重度の知的障害の人たちと関わる仕事がしたい」という当初の気持ちに従って、最終的にはSHIPの「グループホーム友」を選びました。
――SHIPに入社してどうでしたか。
岩崎
「グループホーム友」で働きはじめて感じたことは、言葉によるコミュニケーションができないという戸惑いでした。
今までのデイケアや相談支援事業所では、言葉を介して信頼関係を構築してきました。それが言葉が使えないとなると、どうやって信頼関係を築くのか・・・困りました。
そこで少し視点を変えて、まずは行動で認めてもらえるようにと考え直しました。洗濯、歯磨き、入浴など、生活の中で必要な支援を誠実におこなうことで、少しずつ「この人は大丈夫かな」と認めてもらえたような気がしています。
たとえば、お風呂には入れるけれど、体を洗うことが難しい利用者様がいらっしゃいました。その方は、お風呂に入るは入ってくださるのですが、なんと「5秒」で出てきてしまうのです。
保清の支援としては体を洗っていただきたいですし、リフレッシュのためにもゆっくり湯船に浸かっていただきたいわけです。でもまずは、どのように入浴されているのかを観なければいけません。
当然のことですが、最初は裸を見られることに強い拒否を示されていました。でも次第に「岩崎さんだったらいい」と言ってくれるようになりました。
他のエピソードとしては、慣れていないことへの変化に強い抵抗を示す利用者様との思い出があります。
関係性を築くことが難しそうなその方の担当になったとき、「怒られてもいいから支援を続けよう」と腹を決めました。そして地道にその方との接点を増やし続けました。その結果、自分とだけでなく、他の人たちとのコミュニケーションも増えていきました。
コミュニケーションの改善と比例するように、今ではかなりできることが増えてきました。性格も穏やかになった印象です。このように、怒られてしまうから止めようではなく、怒られても諦めない支援を継続した結果、その方の人生が好転したと思っています。心の底から、諦めずに「やっててよかった!」と感じています。
その人にあった「個別の支援」を見つけたい
――今の「仕事内容」や「やりがい」などを教えてください。
岩崎
仕事の内容をひと言でいうと「生活の介護」、利用者様の生活のすべてを支援する仕事です。
支援の目標や方針は、事業所の責任者でもあるサービス管理責任者が決めます。そして私たち世話人は、その目標や方針に沿って支援を提供していきます。
目標や支援方針の設定期間は半年間です。たとえ思うような成果が出なくても、その間の支援の取り組みが「次の半年へのアシスト」としてつながっていくような関わりをしていきます。とくに、重度の知的障害者支援ではその繰り返しが大切だと感じています。
そのために、まずは行動観察を通して利用者様の傾向をしっかり観ています。
重度の知的障害をお持ちの方は言葉によるコミュニケーションが難しいことが多く、絵カードや写真でのやり取りが有効なことが多いです。
そのため、居室に絵カードなどを貼って、これからすることの見通しを示すようなスケジュール支援を提供します。その他、洗濯物の畳み方を理解してもらうために視覚的に分かりやすく説明することもあります。
こういった一人ひとりの理解の特性に合わせた支援の取り組みを、日々地道に、生活の全般に渡って支援していきます。
重度の障害を持っているといっても、本当に一人ひとり違います。
この人にはここまでの支援が必要だけど、別の人に同じ支援をすると逆に能力が落ちてしまうということもあります。「できる部分を増やす」という自立支援の観点から、その人にあった支援を見つけていくことがとても大変なところでもあり、同時にやりがいでもあるなと感じています。
支援でとくに意識していることは「どうしてこういう行動をするのか?」について、ちゃんと理解することです。
たとえば、自傷行為をする利用者様がいらっしゃいます。大抵の場合、その行為の前に何か原因となるキッカケがあります。
または、その自傷行為の代わりとなる行動を知らなかったり、自傷行為によるメリットを強く感じすぎていることも原因になります。
いつもと異なる行動をする時にはそれなりの理由があるのです。言葉でコミュ二ケーションできない分、支援者である私たちが一つひとつの出来事をよく観て「それが何か」をできるだけ察するようにしています。
「明るくて自由」それが「グループホーム友」
――職場の雰囲気や魅力などを教えてください。
岩崎
いくつかの職場を経験してきていますが、一番雰囲気が明るくていいですね。それと、相談しやすいことも魅力の一つだと思います。
たとえば、利用者様の通院同行など、担当者だけで対応しようとすると業務に無理が生じてしまいます。そういった時は、他の職員さんにお願いせざるを得ないのですが、そのお願いがとてもしやすい雰囲気があります。また上司への相談もしやすく、とても助かっています。
「グループホーム友」全体の雰囲気としては、真面目に仕事の話をするときもあれば、力の抜けた雑談もできる空気感があり、とても気に入っています。
「グループホーム友」は食堂が広いところも魅力の一つです。5,6人でご飯を食べていて、職員のひとりが相談をすると、すぐさまホスピタリティ溢れるランチミーティングがはじまります。
ただ、食事は休憩なので、もちろんタバコを吸いたい人は喫煙スペースへ行きますし、車の中で一人になりたい人はサッと車の方へ行きますし、そのちょうどいい自由さも、「グループホーム友」の良さかもしれません。
――今後の目標、そして一緒に働きたい人を教えてください。
岩崎
個人的な今後の目標は、自分の半年間の支援をまとめて分かりやすく発表できるようになること。
あとは後進の育成ですね。
新人職員への重度の知的障害に関する研修は、内部研修として自分が講師となって進めています。もっとどんどんやりたいと思っています。
SHIPでは内部研修の詳しい資料がきちんと用意されているので、それをベースとして自分の体験も交えて伝えています。そして疑問に答えて、相手も自分も成長していくようなやり取りは楽しいです。
もとはといえば内向的だったはずなのに、今は講師が楽しいというのは不思議な感覚ですね。
一緒に働きたい人は、失敗してもめげない人です。私もそういったタイプの人間です。
仕事をしていれば必ずどこかで失敗します。失敗したことを忘れない。でも、これも成長のチャンスだとポジティブに変換できるとお互いに励みになります。何かあったら早めに相談してもらえると嬉しいです。
性格的には、明るく朗らかな人が合っているんじゃないかと思います。「グループホーム友」の職員さんはまさにそんな感じの人たちです。
実は自分も、もしかしたら周囲から「もっと悩んだ方がいい」と思われているかもしれません(笑)
ありがとうございました!
様々な現場で福祉の仕事をし、常に新たな挑戦をし続けてきている岩崎さん、
これからも頑張ってください!
フリーランス/リワークトレーナー/タスク管理習得支援ツール「タスクペディア」原作者