サウナとポリヴェーガル理論の関連
はじめに
現代社会では、ストレスを感じる場面に頻繁に遭遇します。
そんな中、多くの人が心身のリフレッシュ方法を求め、サウナはその一つの手段として注目されています。
そしてサウナは、単に身体を温める場所以上の存在として認識されつつあります。
この記事では、サウナがどのように私たちの心と身体に良い影響を与えてくれるのかについて、ポリヴェーガル理論をもとに個人の勝手な見解として探っていきたいと思います。
サウナの目的について
昔からサウナは、北欧やロシアなどで利用されてきたそうです。特にフィンランドでは、サウナは日常生活の一部として根付いており、過去には以下のような目的で利用されていたのだそうです。
- 社交の場:人々が集まり、交流を深める居場所の役割として
- 宗教的・儀式的:身体を清めるための宗教的な儀式や伝統行事の一環として
現代社会においては、サウナの利用目的はより多様化しており、科学的な研究に基づくような効果も広く認識されています。また、健康管理や生活の質の向上に向けて、以下のような点が注目されてきました。
- ストレス管理とメンタルヘルス:リラクゼーションやストレス軽減の手段として
- スポーツリカバリー:トレーニング後におこなうリカバリーの手段として
- 加齢に伴う疾病ケア:血圧の低下や心血管系の健康促進などの手段として
サウナの効果について
一般的にサウナには、以下のような効果があると言われています。
リラクゼーション 効果
サウナの高温環境には、筋肉をリラックスさせ、ストレスを軽減する効果があります。これによって、心身のリフレッシュを感じることができます。
デトックス 効果
サウナでの発汗によって、皮膚を通じて体内の毒素や老廃物が排出されると言われています。
血行促進 効果
高温により血管が拡張し、血行が促進されます。これによって、新陳代謝が活発になり、疲労回復が早まると言われています。
免疫力向上 効果
サウナに入ることで一時的に体温が上昇し、免疫細胞の活性化が促されると言われています。
肌質改善 効果
発汗により毛穴が開き、皮膚の汚れが取り除かれることで、肌がきれいになると言われています。
※サウナによる効果をちゃんと知りたい人はご自身で調べてくださいね
ポリヴェーガル理論とは
ポリヴェーガル理論では、以下の三つの異なる神経系の反応が、人間が『危険』を感じる状況、『命の脅威』に直面する状況、そして『安全』を感じる社会的な状況において、どのように働くかを説明しています。
この理論は、トラウマケアや精神療法において重要な洞察を提供し、昨今、注目されています。とくに、社会的つながりによる安全性や安心感の再構築が回復に重要であることを教えてくれます。
危険の認識と「交感神経系」
交感神経系は、身体が危険を感じたときに活性化し、「闘争・逃走反応」(fight-or-flight response)を引き起こします。この状態では、心拍数や呼吸が速くなり、身体が素早く反応できるように準備され、いち早く防衛に備える役割があります。
命の危険の認識と「背側迷走神経系」
古い副交感神経系(背側迷走神経複合体、dorsal vagal complex)は、極度の命の脅威に対して活性化し、不動状態(freeze response)を引き起こします。この反応は、極限状況での生存戦略として、動きを止めてある種の死んだふり状態になることで捕食者(命の危険)から襲われないようにする役割があります。
安全の認識と「腹側迷走神経系」
新しい副交感神経系(腹側迷走神経複合体、ventral vagal complex)は、安全と感じられる環境下で活性化し、社会交流システムが促進します。この状態のときは、心拍数が安定し、リラックスし、人と交流する能力が高まります。これは、信頼できる人間関係の構築やコミュニケーションの促進にとって重要な役割を果たします。
サウナとポリヴェーガル理論の関連
サウナ体験は、ポリヴェーガル理論に基づく3つの自律神経系に深く作用していると勝手に推測しました。
交感神経系の活性化
サウナの高温は、身体に適度な危険を感じさせるため、交感神経を活性化させて一時的な過覚醒状態をつくり出します。これによって自律神経系はエネルギーを増加させ、生き残りに向けた『闘争逃走反応』の準備を進めます。
ただ10分ほど経過した後、自分の意志で逃走できることが分かっている劇場型の脅威なので、比較的安全に危険へと曝露できるのが特長です。
背側迷走神経系の促進
水風呂の冷却効果は、活性化した交感神経系を一気に鎮静する効果があります。この冷却効果は『凍りつき反応』に似ています。
戦うことも逃げることもできずに、その状態に耐えていると、背側迷走神経系が活性化しはじめ、感覚が麻痺して自分の身体ではないように感じてきます。
ある種の離人感や虚脱感は、日常からかけ離れた不思議な感覚を与えてくれます。
腹側迷走神経系の活性化
外気浴は、腹側迷走神経系を刺激し、心の平和と社会的なつながりである『社会交流システム』を強化します。
高温と低温の脅威から回復していくプロセスが、腹側迷走神経系の浸透感を無条件に与えてくれるように感じます。
これらの自律神経系のバランスをサウナによって意図的に図ることで、私たちの心身に深いリラックスと調和をもたらしているのだとポリヴェーガル理論をもとに勝手に推測しました。
サウナで整うライフスタイルの提案
ということで、サウナを意識的に生活に取り入れることで、心身の健康を促進し、ストレス耐性を向上させてみてはいかがでしょうか?
週に数回、月に数回のサウナ施設への訪問が習慣化することで、日常生活の質が向上するかもしれません。
少し強引な理屈でしたが、サウナの体験とポリヴェーガル理論を組み合わせることで、心身の健康を促進し、ストレスが多い現代社会においてもバランスの取れた生活を実現することができると思います。
まとめ:日頃の支援への応用
サウナとポリヴェーガル理論の講釈を垂れましたが、辛い体験をしてきた人たちへの共感的理解と支援の考え方にも役立つと考えます。
たとえば、サウナの高温の中に閉じ込められて永遠に出られなかったとしたら、私たちの神経系にはどのような反応が起こるでしょうか?
同様に、冷水の中から永遠に出られなかったとしたら、私たちの神経系にはどのような反応が起こるでしょうか?
そして、外気浴で安全な人達との交流の中で過ごし続けるということは、私たちの神経系にどのような影響を与えるのでしょうか?
目の前のクライエントの健康度を自律神経系を通してアセスメントすることができると、私たち支援者のアプローチの仕方も変わってくるのではないでしょうか?
以上、アディオス・アミーゴ
国家資格:公認心理師・精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士
その他:TSM(トラウマセンシティブマインドフルネス)修了・SE™プラクティショナー初級修了・TFTパートナー・ChatGPTエジソン塾1期生・整理収納アドバイザー2級 など
『努力すること』と『環境に助けてもらうこと』のバランスを研究し、自分自身の最適化を目指して精進中