メンタル不調の経験を活かした社会福祉士としての働き方は? ご質問への回答です。

ご相談の内容

社会福祉士の仕事に興味があり、来年専門学校に通うかどうか迷っています。個人的に職場や仕事内容については色々調べていて、職場により関わる相手が異なることも知っています。

ただ、実際にその仕事をしている方にお聞きしたいのが、人間関係を常に考えることのストレスについてです。ネット上には精神的にキツイ等の嫌な情報が目につくので、実際どうなのかを知りたいと考えています。(特に介護施設の場合、介護の仕事もするため大変という意見を見ました。

もし、社会福祉士を取得するのであれば、メンタル不調に陥らないようにするために、できることはありますでしょうか?

私は今、やりがいのある仕事がしたいと考えていて、実際自分がメンタルを病んだことで人を救う仕事に興味を持ちました。ただ、人間関係に疲れやすい面があるので、安易に目指せないというのが実情ですが、福祉制度についての勉強にはとても興味があります。

私は今進路に悩んでいます。良ければ教えてくださると幸いです。

 

はじめに

めちゃくちゃ個人的な意見になりますが、福祉の仕事はキツい。けれど、人間理解という意味ではとにかく秀でた業界で、遣り甲斐は抜群だと思います。

さらに、それを「やりたい」のであれば、やった方がいいと思います。
後悔って『後から悔やむ』と書くじゃないですか。それってすごく嫌じゃないですか?

ただし、クライエントとの人生に関わる仕事だし、かなりの感情労働なので、ストレスが溜まって余裕がなくなると、メンタル不調の再発リスクは高まると思います。事実、そういう人は何人もいます。

また、介護の仕事についてですが、身体介護の仕事は大変だと思います。支援者自身が身体に感じる疲労感は、確実に心にも影響してきますので大変さはあると思います。でも、どんな仕事にも一長一短あるので、私としては身体介護だからダメって結論には至りません。

むしろ、一緒に働くスタッフの余裕のなさ(スキル不足・コミュニケーション不足)のほうが嫌です。クライエントや仲間に悪影響を及ぼしてきますからね。職場選びは、一緒に働く人の見極めのほうが賢明なのではないでしょうか?

そのほか、業務の量、自分のスキル、自分の働き方、会社の風土、仲間の協力、クライエントの特徴、SVの存在、異動、昇格昇進、給料など、避けることのできないイベントが複雑に絡み合い、ヤバい状況に陥るときは安易に想像できます。

上記を理由に、私も年に何回もダークサイドに落ちかける(というか落ちる)ときがあります。

でもでも、遣り甲斐は確実にあります。

後悔しないように、自分の決断に対して、自分で責任をもつ覚悟で、この業界にチャレンジしてもらいたいです!

 

図2

 

では、以下に5つのメンタルヘルス対策を紹介したいと思います。

 

対策① 『コーピングスキル』を確立する

☆ご自身がメンタル不調に陥った理由は理解していますか?
☆ご自身がメンタル不調を発症したメカニズムは理解していますか?
☆ご自身がメンタル不調から回復できた方法は確立されていますか?
☆ご自身のメンタル不調の再発予防策は確立されていますか?

いわゆる『病理』を理解することと『治療方法・予防方法・支援方法』を理解しておくことは、自己理解につながり、他者理解にもつながります。

言い方は微妙なのですが、支援の『拠り所』なしで同じ境遇のクライエントを担当すると、気持ちだけで支援することになるため、早々にバウンダリーが滲みはじめ、クライエントの問題が自分の問題のように感じられて、いつの間にか病み落ちすることになります。

ただし、『拠り所』があれば、バウンダリーを引きながら支援することが可能だと思います。

正直なところ「気持ちだけは負けない」などと『気持ちを拠り所』にしている人とは一緒に働きたくありません。そういう人に限って「こんなに考えてあげてるのに、あの人は何にも分かってない」などと、クライエントを一方的に批判します。(昔の私がそうでした…もう最悪のヤツでした…)

『拠り所』とは、知識と経験の統合のことです。

『拠り所』が無いならば、これからでも全然間に合うと思います。あらためて、ご自身の『人生の棚卸し』や『勉強』を進めていくのが良いかと思います。

ちなみに私の『拠り所』は
☆心理テストを受けまくって『自己の限界』を理解している
☆理解できない症状は『精神疾患の病理』を拠り所にしている
☆相談援助は『動機づけ面接法』を拠り所にしている
☆援助関係の形成は『バイスティックの7原則』を拠り所にしている
☆ストレスコーピングは『タスク管理・慈悲の瞑想・マインドフルネス』を拠り所にしている

というような感じです。

 

 

 

対策② 『オープン or クローズ』の働き方を考える

もし、障害者手帳をお持ちでしたら、障害をオープンにした働き方も考えられると思います。オープンにすることで『障害者差別解消法』による合理的配慮を受けることが可能です。

雇用主との協議になりますが、配慮してほしいことを伝えて、可能な限り協力してもらえる環境って最高じゃないですか?

また、自分のことをカミングアウトできるって、胸のつかえが取れてすごくスッキリした気持ちで働けると思いますが、いかがでしょうか?

さらに、
企業側には雇用調整金が入りますからね。
企業側は法定雇用率も達成しないといけませんしね。

障害をオープンにして働くのであれば、外部サービスの就労定着支援とか、ジョブコーチといったサービスも利用できます。

障害をクローズで働くにしても、多少は自分の特性をオープンにしていく必要があると思います。100%健康体で働いている人なんていないのだから。

例えば、朝が弱いとか、怒られると凹みやすいとか、営業が苦手とか、ウィークネスを気軽にカミングアウトできると良いですよね。

ウィークネスばかりカミングアウトされても上司や同僚は困ってしまうので、資料作成は得意とか、雑用はお任せあれとか、相談を聴くことは得意とか、ストレングスもあわせてカミングアウトしたいですね。

そうすることで、社内で助け合いの輪が広がっていくと、自分発信で優しい職場がつくられるかもしれません。理想論と言われるかもしれませんが、とても大切なことだと思うのです。

最近では、社内サービスが充実している企業も増えてきていますね。コロナ禍の影響もあり、社員のメンタルヘルスに配慮して、PSWや産業医を置いたり、メンター制度があったり、独自のカウンセリングサービスがあるなど、社員に手厚い企業も増えつつありますね。

 

図3

 

 

対策③ 自分なりの『働き方』を確立する

これはすごく大事なことです。
たとえば『残業はぜったいにしない』と決めることです。

残業が増えているときって、他人の仕事 や 他人の課題 を肩代わりしているときだっていう噂があります。

この噂は、かなり信憑性の高いウワサだったりします。

かといって、サボってよし!ということではありません。

☆自分のタスクは確実に終わらせるスキルを身につけること。
☆他人のタスクを安易に引き受けないこと。
☆タスクは極力、相手に持ってもらうように手離れを早くすること。
☆今日やるタスクは前日までに決めておくこと。
☆今日、入って来たタスクは、基本的には明日へまわすこと。

などなど

つまり、『タスク管理』と『スケジュール管理』を極めて、自分の仕事は確実に完遂できるようになることを強くおススメします。

GTD®という仕事術では
☑ コントロール感:やることを掌握している感覚
☑ リラックス感:掌握しているから、落ち着いていられる感覚
☑ フォーカス感:掌握して落ち着いているからこそ、やることに集中して取り組める感覚

GTD®︎では、3つの感覚をもつことで仕事の生産性は爆上がりすると説いています。
https://gtd-japan.jp/

このような働き方を確立することで、無理のない仕事の進め方を体感できると思います。結果として、ストレス値の高い福祉の仕事でも長いこと勤められることと思います。

よろしければ、ウチの会社で無料配布しているタスク管理ツールの『タスクペディア』をご利用くださいませ。

 

1.チーム・タスクペディアのサービス一覧

 

対策④ 『スーパービジョン』を受ける

あらかじめ、自分の能力の限界を知っておいた方が賢明です。
自分ひとりの力なんて本当に無力です。

だからこそ、社内での教育体制が充実している職場や、スーパービジョンが受けられる職場を就職の要件にしてみるのもアリだと思います。

昨今、業界ド素人の株式会社が営利目的のみで福祉業界に参入してきたり、古参の会社でも悪しき慣習のもとに時代遅れのしきたりに固執している会社もあるあるなので。職場選びは慎重に。

就職する前に見学や体験などして、会社の雰囲気を事前に味わってみるのも良いですね。

もし社内がムリだったら、社外にスーパービジョンを求めることです。研修でもなんでもいいので、自分の職場だけっていう狭い視野に陥らないように注意してください。

実は、私自身も社内より社外の方が、分かりあえる仲間が多かったりします。知らないことを教えてくれたり、新しい気づきをもらえるのは、社外の人の場合が多いです。社会研修で知り合った人たちと、お互いに協力し合う仲間になることは珍しいことではありません。

そのためにも、対策③でお伝えした『自分なりの働き方』を確立して、自分が本当にエネルギーを注ぎたい活動に時間を投下できるようにしていきたいものです。

資格があって、さらにスキルUPすれば、食べることには困らなくなりそうです。

図4

 

 

対策⑤ ヤバくなったら 迷わず『休職・転職』する

自分の人生は自分で守る。この前提は大切です。
会社が守ってくれるというのは幻想だと思います。

私は、現場側にも経営側にも携わっているのですが、会社が社員のすべてを背負うというのは難しいです。

世の中には『社会保障制度』というものがあるわけなので、会社も同様に「国の制度を使うことを優先しよう」ってなるのが必然です。

たとえば、退職して失業状態になれば、失業保険から失業給付が出ます。
たとえば、病気やケガで休職して収入がなくなれば、社会保険から傷病手当金が出ます。

会社も、社員も、最終的には、国が設計した社会保障制度に依存するように設計されているのです。

だから、『自分の人生は自分で守る』ことを前提に、ヤバくなったら社会保障制度を上手く利用することも前提にしておくことをおススメいたします。

会社が守ってくれないんだったら、もう割り切っちゃいましょう。

緊急事態が発生したら、予め自分で決めておいたプランに従うだけです。

『休職する』『退職する』『転職する』
早めに決断して、プラン通りに行動するのはどうでしょうか?

 

図5

 

 

さいごに

色々とうんちくを話しましたが、私としては社会福祉士の取得や福祉の仕事にチャレンジしてみることをおススメいたします。

やってみてダメだったら、辞めてもいいし、教訓を活かして勉強して再チャレンジしてもいいし。どんな仕事に就いたって、どんな人と出会ったって、全ての経験が自分の人生の糧になるんだ!思いましょうよ。

ウチの会社でも障害者雇用で働いて、結局はリタイヤしたけれど『後悔はしてない』って人がいます。そういう人の話を聞いてみるのも良いと思いますよ。

とにかく、後で悔いることのないように『人生にチャレンジ』するという姿勢は忘れずにいたいですね。