MBSR(マインドフルネス・ストレス低減法)
8週間トレーニングを実体験!

福祉の仕事に携わって22年。知識や経験が不足していたころは、適切な支援ができず、後悔や罪悪感を抱えることも多くありました。

その気持ちをきっかけに、『本当に役立つ支援とは何か?』を追求するようになり、出会ったのが『MBSR(マインドフルネス・ストレス低減法)』です。

 

MBSR(マインドフルネス・ストレス低減法)とは?

MBSRMindfulness-Based Stress Reduction)は、ジョン・カバット・ジン博士が1979年に開発したマインドフルネスのプログラムです。

8週間、毎日45分の瞑想やエクササイズを行うことで、ストレス低減や心身の健康促進を目指します。

マインドフルネスを実践するときの『7つの態度』があります。

1,ジャッジしない(評価や判断をせず、ありのままを観察する)
2,気長に待つ(焦らずに時間をかけて向き合う)
3,フレッシュな目(初めて見るように体験する)
4,信頼する(自分の感覚や気づきを信じる)
5,頑張りすぎない(行動モードから、存在するモードに切り替える)
6,受け容れる(現状を受け入れ、適切な対応を探す)
7,手放す(物事を思い通りにしようと執着しない)

 

MBSRでは、以下の『6つの瞑想』エクササイズを実践します。

①、咀嚼瞑想
②、呼吸法
③、ボディ・スキャン
④、ヨーガ
⑤、静座瞑想
⑥、歩行瞑想

 

MBSRが心と体に与える『効果』は多数あります。

・ストレスホルモンや炎症を軽減する
・不安症状やうつ病、PTSD症状の改善する
・慢性疼痛や高血圧など身体的症状が改善する
・脳の海馬や脳幹における灰白質が増加しストレス耐性が高まる etc.

 

「小児期トラウマがもたらす病」という書籍には、特に呼吸がもたらす効果が強調されており、副交感神経系を高める最も効果的な方法として深呼吸が紹介されていました。

これを知った瞬間、「絶対に自分で体験しなければ!」と思い立ち、MBSRへの参加を決めました。

 

MBSRを8週間実践してみると、最初は瞑想が難しく感じましたが、続けるうちに身体の感覚や呼吸を通じて「今ここ」に戻れる感覚が深まりました。

コンプレックスだった身体の手術痕への不快感とも、次第に共存できるようになりました。

また、生活全体が落ち着き、理由の分からない焦燥感も減っていきました。

 

『頑張りすぎない』『手放す』というマインドフルネスの態度を意識することで、日常生活の質も大きく向上しました。

とくに「触覚」や「嗅覚」を意識的に活用することで、精神的な安定が得られることにも気づきました。

 

それでは、ここからは、わたしが実際に体験した8週間のMBSRの様子を報告したいと思います。

かなり長くなりますので、離脱する人はココがよいタイミングですが、できるだけお付き合いくださいますようお願い申し上げます。

 

 

MBSR体験記「1週間ごとの様子」

<プログラム初日>

初めてのエクササイズは「レーズンエクササイズ」と「ボディスキャン」でした。

レーズンをじっくり観察し、ゆっくり味わうこと。身体の各部位に順番に注意を向けること。初めて意識を集中させることに戸惑いを感じました。

とくに私には肝臓移植による手術痕があるため、その部位の違和感に引っ張られ、集中が難しく感じました。

それでも「ジャッジしない、頑張りすぎない、受け容れる」というマインドフルネスの態度が支えになりました。

 

<MBSR:2週目>

参加者同士で実践状況を共有するようになりました。

忙しい中で継続が難しいという共感が得られ、孤独感が和らぎました。

MBSRの基本的なプログラムは、毎日の「瞑想」と、週1回の「体験の共有」です。

この週は、ボディスキャンに加え、呼吸瞑想や日常的な行動への意識の宿題が出されました。

最初は、忙しい日常に抗うような感覚でしたが、徐々に丁寧な生活を心がけることで、小さな幸福感が得られるようになりました。

 

<MBSR:3週目>

「寝ておこなうマインドフルネス・ヨーガ」を体験しました。

身体を動かしながら意識を集中させることで、心地よさを感じ、身体の違和感が和らぐのを実感しました。

ただ、やはり手術痕への意識は完全には消えません。

しかし、その違和感さえも評価せず「フレッシュな目」で観察する態度が少しずつ身についてきました。

 

MBSR:4週目

この週から、ストレス場面での自動的な反応に気づく練習が増えました。

「職場におけるマインドフルネスの21の方法」を日常生活に取り入れると、日々のペースが劇的にゆっくりになりました。

焦りが減り、落ち着きを感じられる時間が増えてきました。

 

<MBSR:5週目>

「静座瞑想(45分)」を初めて体験しました。

45分という長さに不安がありましたが、音声のガイドに従うことで、自然に瞑想状態に入ることができました。

心がざわつく日もありましたが、呼吸や身体感覚に意識を戻すことで、徐々に集中力が高まっていくことを実感しました。

 

<MBSR:6週目>

この週はストレスが多く、瞑想に集中できない日が続きました。

そこで学んだのが『STOP』と『RAIN』というマインドフルな対処法でした。

ストレス場面で一旦立ち止まり、自分の感情や身体感覚を客観的に観察する練習を積むことで、自動操縦的な反応を止められるようになりました。

 

『One Dayエクササイズ』

MBSRでは、一日みっちり瞑想をおこなう日が設けられています。

朝9時から夕方16時まで、1日を通じて瞑想を繰り返しました。

「山の瞑想」では自分を揺るぎない山に例え、堂々とした自分を感じました。

「慈悲の瞑想」では、自分や周囲の人、さらには苦手な人にまで慈悲の気持ちを広げる体験をしました。

驚いたことに、この一連の瞑想によって長く抱えていたネガティブな感情が、自然と心から剥がれ落ちました。

これが私にとって大きな転換点となりました。

 

<MBSR:7週目>

自分の五感に意識を向ける練習が中心でした。

日常生活の中で視覚情報に圧倒されていることに気づきました。

一方、触覚や嗅覚に意識を向けることで、自分の心地よさや安心感を取り戻せることも知りました。

温かいコーヒーカップや柔らかいブランケットの触感は、私の新しいアンカー(心の拠り所)になりました。

 

<最後の週:8週目>

この日は、参加者がそれぞれの『キーアイテム』を共有しました。

私が選んだのは、毎日 瞑想のときに触れていたクッションや化粧水・クリームなど、心地よい触感を与えてくれるアイテムでした。

また、この8週間を通して気づいたことを仲間たちと深く共有し、互いの成長を実感しました。

 

変化した人生観「ペースを落とせば気づきが増える」

MBSRプログラムを終えて、私が得たものは明確でした。

身体の違和感やストレスと上手に付き合えるようになり、生活全体のペースが落ち、原因不明の焦燥感から解放されました。

そして、自分自身に対して「許す」「信じる」という姿勢が持てるようになりました。

正直、このプログラムを始める前は、「本当に続けられるのだろうか」と不安でした。

 

しかし、8週間を終えてみて、人生が劇的に変わったとまでは言えませんが、「人生への向き合い方」は確実に変化しました。

マインドフルネスは、心や身体に抱える苦しさを少しずつ和らげ、日々の小さな幸福感に気づかせてくれる方法です。

ストレス社会に生きるすべての人にとって、この体験は人生をより豊かにするヒントを与えてくれるものだと心から感じています。

 

それでは、アディオス・アミーゴ