統合失調症ってどんな病気?

大便でトイレに座ろうとしたら、便座が上がっていて、便器に落ちそうになった事務局の上田です。

さて、今日は、統合失調症についてお話ししたいと思います。

統合失調症には、まだまだネガティブなイメージがあるので少しでも払拭していきたいのです。

 

統合失調症の「3つの症状」

統合失調症の中核的な症状は、①陽性症状、②陰性症状、③認知機能障害です。

文章が苦手な人向けに動画を作りましたので、よろしければこちらもどうぞご活用くださいませ。

 

 

①、陽性症状

『なかったものが現れる』症状です。

具体的には『幻聴』が現れます。

 

幻聴は、まわりに人がいないのに声が聞こえてくる症状です。

幻聴のもとになっているものは『自分の心に閉じ込めた気持ち』だったりします。

自分しか知らないはずの気持ちが、色々なところから聞こえてくる現象です。

自分の心の声が世の中に筒抜けになります。とても不安です。

 

でもまわりの人には聞こえていません。

この現象を伝えても理解してもらえません・・・

信頼している家族や友人にもこの大変な事態を分かってもらえません・・・

 

となると、自分ひとりでこの現象を解釈せざるを得ません。

そしてある日、このように考えると腑に落ちるのです。

 

「国家ぐるみで自分のことを監視しているからだ!」

「歯の治療をしたときにチップを埋め込まれたのだ!」

「神様から特別な指令を受けているのだ!」

 

このような結論に達した思い込みが『妄想』と呼ばれます。

なんと言われても自分にとっては正しい解釈です。

「訂正不能な確信」へと変わっていきます。

このような陽性症状は、お薬(抗精神病薬など)で改善できますのでご安心ください!

※お薬の効果が低い場合(治療抵抗性統合失調症)の治療としては、ECT(電気けいれん療法)や、クロザピンの処方という選択肢があげられます。

 

 

 

②、陰性症状

『あったものが失われる』症状です。

具体的には『感情や意欲』が失われます。

 

感情には「喜怒哀楽」がありますが、そういった感情が感じ取りにくくなります。

そのため、自分の感情を表現することも、相手の感情に共感することも難しくなってきます。

このような状態を『感情の平板化』といいます。

 

感情は行動を起こすお知らせとなりますので、なにかを自発的にしようという意欲も湧かなくなってしまいます。

働く意欲が湧いてこなかったり、ひどい時には着替えなどの日常的な生活動作も億劫になります。

統合失調症を発症した人が引きこもりがちになる背景には、陰性症状があるかもしれません。

 
このような陰性症状も、お薬や休息や生活習慣によって改善できますのでご安心ください!

 

 

③、認知機能障害

『あったものが失われる』症状です。

具体的には『認知能力』が失われます。

認知能力は『注意力・記憶力・集中力・情報処理能力・計画実行能力・問題解決能力』のことです。

 

今まで当たり前に、スムーズにできていたことが、なぜか上手くいかなくなります。

ある出来事に「注意」を向けることが難しくなり、少し「集中」して、少し「記憶」しておく、といったことが難しくなります。

そうなると、「情報を処理」することが難しくなり、問題が起こった時に「計画」を立てて、「実行」に移し、「解決」していくという、問題解決のプロセスがとても難しくなります。

今まで当たり前にできていたのに・・・
 
実は認知機能障害は、お薬による改善が見込めません。

支援の方法としては、出来事のとらえ方や考え方の修正を図る『認知行動療法』『SST:ソーシャル・スキルズ・トレーニング』、認知能力そのものの改善を図る『認知機能リハビリテーション』があげられます。

これらと並行して、生活や職業のリハビリテーションをしていくことで改善が見込めるのでご安心ください!

 

 

まわりの人たちの「接し方」のポイント

統合失調症の患者さんたちが『家族に希望すること』を調査した結果は以下の通りです。

 

1位:もっと私の気持ちを分かってほしい

2位:あまり口やかましく指示しないでほしい

3位:傷つけるような言動をしないでほしい

※「全国精神障がい者家族会連合会」によるアンケート調査

 

つまり、もっと『共感してほしい・理解してほしい』ということがポイントとなります!

 

幻聴はお薬によって改善される症状ですが、お薬を中断することで再発することもしばしばです。

ある調査によると、お薬を中断した際の再発率は83%にもなります。

 

また、お薬以外にも

幻聴が再発する4つの要素をおさえておくことが大切です。

 

①不安、②孤立、③不眠、④過労

※「正体不明の声」著者:原田誠一

 

幻聴を引き起こすとされる「不安・孤立・不眠・過労」の4つの要素とあわせて、病気や薬の特徴について、ご家族をはじめとしたまわりの人たちが正しく理解していくことはとっても大切です。

 

 

最後に「知ってほしい」こと

統合失調症など精神障害者に対するネガティブなニュースを広めた結果、あたかも精神障害者が犯罪を犯しやすいというイメージが少なからずあります。

そこで、病気と犯罪に関する誤解を解きたいと思います。

 

日本の犯罪率は、133人に1人程度の割合でおこります。

精神障害者の犯罪率は、953人に1人程度の割合でおこります。

※平成24年度の犯罪白書・障害者白書・人口統計より

 

つまり、精神障害のない一般市民のほうがよっぽど危険な存在だということが分かります。

統合失調症は「100人に1人が罹る身近な病気」ですし、治療によって改善可能な病気なのです。

少しでも世の中の偏見が減ることを祈ります!